音SHIPS<br>-注目アーティストの友だち巡り・jan and naomi編-

音SHIPS
-注目アーティストの友だち巡り・jan and naomi編-

毎号、ゲストの方にお友だちを紹介いただき、注目アーティストを数珠つなぎにしていく本企画。第9弾となる今号は、Chocolat & Akito(ショコラ&アキト)さんの紹介で、jan and naomi(ヤン&ナオミ)さんが登場。実はJanさんのお母さまは過去桑原茂一さんの連載にて、shipsmagにも登場されているんです。[http://www.shipsmag.jp/2014summer/article.php?no=9] 長身のかっこいいルックスに「静かなる狂気」と呼ばれるフォーキーなサウンド、一聴しただけではどこの国のアーティストなのか判別不能で独特な魅力に溢れた2人組。今回はそんな彼らの秘密に迫りました。

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片寄さんは「先輩」っていう言葉のなかにあるエグ味がない人(Jan)

――前号に登場していただいたショコラ&アキトさんにご紹介いただきまして、今日はよろしくお願いします。Jan(ヤン)さんはGREAT 3のメンバーとしても活躍されていますけど、片寄さんとの出会いはいつ頃なんですか?

Jan(ヤン) 一番最初は3歳のとき。うちの母がフォトグラファーで、片寄さんがまだGREAT3をやられる前に撮影をしていて、その現場で僕は遊んでたみたい(笑)。その後、バンドを始めた頃にfacebookでつながって遊ぶようになって、GREAT3を復活させるときに声をかけてもらったんですよね。そこからはNaomiさんとも一緒に遊んだり。なんか宇宙人みたいな人ですよ。ユーモアと教養がありつつも、それに縛られずに人生を楽しんでいる。普通、知りすぎていると何かを避けたり、わかってるからといってやらない人も多いでしょ? そういうことを恐がらずに楽しもうとしているところがいい。

Naomi(ナオミ) 音楽に対して真面目で誠実で、たくさんの知識があるんだけど、それを押し付けてこない。聞いたら教えてくれるけど説教くさくないっていうか。すごい素敵なお兄さんです。

Jan 年上の人のイヤなところがないよね。「先輩」っていう言葉のなかにあるエグ味がない。

――それって最高ですね。おふたりはライブのできるバーで知り合ったという話ですけど。

Naomi 知り合う前はお互いにソロで活動してて。

――当初から音楽性は似ていたんですか?

Naomi その頃のJanはアコースティックギターで歌ってて、僕はエレキギターで歌ってて。だから、ギターを弾いて歌うっていう意味では同じ、それに曲もわりと似てたけどアプローチが違ってた。

Jan うん、曲のテンポ感は似てて、俺はアコギにハーモニカ、Naomiさんはエレキにエフェクターって感じ。

――そのバーの閉店パーティで初めて一緒にセッションをしたんですよね。

Naomi そこはライブイベントを月に何回かやっていて、でも出演者を募集するんじゃなくて常連同士が対バンするみたいな感じ、だからJanとも何度か同じ日に出たことはあって。曲を一緒に作った閉店日は、最後まで酔い潰れずに起きてたのがたまたま俺とJanで、じゃあ音出してみようかって。

――おふたりの音楽を聴いて、さらにそのエピソードを聞くと、そのお店のイメージはすごくかっこいい空間なんですけど。

Naomi 場所は渋谷の百軒店だから、風俗店とか怖い人が多いエリアなんだけど、そのなかではわりと時間がゆっくり流れているようなお店。

Jan あまりにも店の周りに欲望が渦巻いているから、でもそこは台風の目みたいに静かで。

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空間を作って空間をなくすみたいのが楽しくなってきて(Jan)

――おふたりは東京のどこ出身なんですか?

Jan ふたりとも中野区。

Naomi 中野区でも北と南で違うんですけどね。

――あぁ~、なんかわかる気がします。音楽をやるキッカケというのは?

Jan 小学校のときに映画『フォレスト・ガンプ』を観て、エルヴィスが出てくるシーンがあるんですけど。それを聴いて母にCDを買ってもらったのが最初。ギターを持ち出したのは中2か中3のときで、リバティーンズやストロークスが流行り始めたときに、その波に乗った感じ。でも、陸上 をやってたからバンドじゃなくてひとりでやってましたね。

Naomi 僕の場合は兄弟が音楽好きで、兄がギターを弾いていて新いコードとか新しいフレーズが生まれるたびに聴かされてたんで、ギターは嫌いだったんですけど(笑)。兄がいないときには勝手にギターを触ってて、ある程度弾けるようになってから親におねだりして買ってもらってからは本格的にやるようになったんです。姉はユニコーンとか奥田民生とかが好きで、兄はグリーン・デイとかオアシスとかニルヴァーナ。

――ふたりで音を出し始めた当初から、今みたいなフォークサウンドだったんですか?

Jan メロディーはあんまり変わらないですけど、もっとアコースティックギターで何かする感じ。そこからライブをやっていくうちに、ちょっとドリーミーでエフェクティブになったり、もっとバキッとしたり、質感が変わっていった感じかな。

Naomi 最初のイメージはラーズの『There She Goes』だったけど、ふたりともアコースティックギターだと単調になってきて、変化が欲しいときにエレキギターに変えて。基本的にはふたりなんで、エフェクターで彩っていくみたいな。

Jan 空間を作って空間をなくすみたいのが楽しくなってきて。空間を埋めることも、わざと作ることもあるし。

日本語でやるとムズ痒いというか、抵抗があるのかもしれない(Naomi)

――曲はどうやって作っていくんですか?

Naomi ふたりなんで、バーでも小さい店でもどこでも演奏できるんですよね。今でも週2回はライブしているから、新しい曲というか卵ができたら本番前の歌合わせで軽く弾いて、じゃあやってみようかみたいなことが多くて。

Jan あんまり練習しないかな、ライブで作っていく感じ。その緊張感のまま曲ができていく。

Naomi あとはクルマのなかとか、駐車場とかも多いかな。

――おふたりとも海外暮らしの経験があるんですよね。曲がすべて英語詞なのも、ふたりにとっては自然な流れだったんですか。

Jan それぞれソロでやってるときも英語詞だったし、バーが閉店するときの最初の曲も自然と英語だったから。日本語でやりたくないわけじゃないけど・・・。

Naomi たぶん圧倒的に英語詞の音楽を聴いてきたからかな。日本の音楽も好きだったのは姉の影響で、それ以外は英語の歌が多かったから。

――やっぱり英語のほうが乗せやすいですか?

Naomi それはあるんじゃないですか。日本語でやるとムズ痒いというか、だいぶストレートになるから抵抗があるのかもしれない。ラブソングとかはいいかもしれないけど。

――母国語が日本語だからこそストレートに聴こえるってことですか?

Naomi それもあるし、聴き手にとってストレートになってしまう面もある。僕らの曲を聴いて、何を歌っているのかわからないのがいいなっていうのもあって。感覚で聴いてくれてるみたいな。僕も英語のラップは聴き取れないから、そういう感じで。

Jan 俺はわりと何を言っているかわかって欲しいから、新しいアルバムでは日本語の歌詞カードをつけていて。

2016年6月発売、3rd.EP
「LEELOO AND ALEXANDRA (FULL)」
jan and naomi

海外の国営放送でも使われるのは楽しみ(Naomi)

――これまでの音源がすべてyoutubeにあがってますけど、あれはどうしてなんですか?

Naomi 6月に新譜を出したタイミングで、過去のものも一挙にアップしたんですよね。

Jan これまでの3作品はすべてリリースに対してアプローチが違っていて。最初は小さいレコード屋さんにあればいいという感じだったけど。

――今はより多くの人に聴いて欲しいってことですか?

Naomi そうですね。全国流通になっても知らない人は知らないし、ライブを観に行きたくても深夜で行けないとかもあるだろうし。あえて閉じていた部分もあるけど、ちょっと間口を広げようかなって。

Jan 新作は曲調やMIX、マスタリングの感じも今までとは違って突き抜け系になってるから。そういう質感とプロモーションのやり方を同じグルーヴでやったほうがいいかなって。

――新しいアルバムは、NHKのいじめ防止キャンペーン用に作られたんですよね。このEPに収録されている曲はすべて使われているんですか?

Naomi どうなんでしょうね。いじめ防止キャンペーンのパイロット版が2015年に作られて、それが世界の国営放送で評価されたらしいんですよ。それがキッカケとなって、他の国もやるみたいな流れがあって。その際に楽曲問題が出て、著作権があると大変だから「自由に使えるものを」って頼まれたんですよね。

Jan パイロット版のときは、ニール・ヤングの曲を使ってたみたい。

Naomi ニール・ヤングを全世界で使うとなると莫大なお金がかかるから。僕ら的には海外の国営放送でも使われるのは楽しみ。

――どんな歌詞になっているんですか?

Naomi 曲を作るキッカケがいじめ防止キャンペーンなので、「お前ら全員殺す」って歌詞ではないです(笑)

Jan その頃はちょうど失恋真っ只中だったから、誰かが遠くに行っちゃうシリーズになってる。

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轟音で制圧するんじゃなくて、静けさで制圧する感じ(Jan)

――youtubeに公開して、世界的なレスポンスはどうですか?

Jan たまにアジアの人から「どうやって買えるの?」とかはあるけど…。

Naomi ネットの反応はわからないけど、ライブに外国のお客さんがいて「きっと僕らの国でもいい感じだよ」みたいに声をかけてくれることは多いですね。

――jan and naomiの音楽は「静かなる狂気」と表現されることも多いですけど、そう言われることはどうですか?

Jan ふたりとも反発とか反抗みたいなものは根底にあるから。それを轟音で制圧するんじゃなくて、静けさで制圧する感じ。でも、そこをあんまり考えすぎず、打ち合わせもせず、作りたい音を言葉なしに共有できているからそこが気持ちいい。

――それはすごくいい状態ですね。話は変わりますけど、おふたりともファッションは好きですか?

Jan 最近は迷彩柄が好き。

――ファッションの変遷というか、自分で選んで買うようになったのは?

Jan ひとりでお店に入るようになったのは中学くらい、エミネムがしている格好みたいな、親に買ってもらえない服をお金貯めて買うようになってから。その後、ストロークスとかリバティーンズが好きになって、デカパンからスキニージーンズに移行するみたいな。

Naomi 僕も中1か中2くらいかな、高円寺までチャリンコで10分くらいだったんですよ。その頃はファッション誌も買ってなかったしインターネットもなかったから「高円寺には古着屋がたくさんあるらしい」って聞いて頑張ってました。顎の上までファスナーがあるような、ナイロンのジャンパーが欲しかったのは強烈に覚えてる。でも、古着のパタゴニアとかは高くて買えなかった。

――最近はどうですか?

Naomi 古着屋とか行きますよ。

Jan ツアー中にふたりで入ったりね。でも、7月に坊主にしてから路頭に迷ってて(笑)。タンスと棚をひっくり返して、いろいろ試すから家を出るまでに時間がかかる。

Naomi フジロックのときも、お客さんはみんなアウトドアウェアじゃないですか。でも、Janはマーチンにデニムを切ったようなすごい短いショーツ、それにニットとごつい革ジャンだったんですよ。「静かなる狂気」(笑)

――あははは、それはかなりヤバい奴ですね。ライブはコンスタントにやられてますけど、今後の活動はどんな感じですか。

Naomi 去年の夏にすでに6曲録ってるんで、それをどうしようかなって。

Jan あと、映画音楽をこの前やって。『Amy said』っていう来年公開の映画なんですけど。

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東京の街を漂っていて、いろんなところで観れて消えていく(Jan)

――そうなんですね、映画とかすごくフィットしそうですね。今後、海外や世界っていうのも見据えているんですか?

Jan タイミングが合えばいいけど、海外といってもどこも一緒だから。東京はハイパー大都市だし、エネルギッシュだし、どこにいっても発信できるから、海外だからすごいっていうのはないですね。ステイタスをあげるために外国に行くのはイヤだなって、行ったからステイタスが上がるとかないし。でも、自分の国以外で俺らの音楽が流れているのはいいことだと思うけど。

――なるほど、MVの制作とかは?

Naomi CD音源にともなう映像っていう意味ではないですけど、スタジオでカメラ3~4台入れて撮ったのは3曲あって。でも、それをみんなMVだと認めてくれなくて。ミュージックビデオってなんですかね? 

――みんな音楽番組で流すために作ってますよね。

Naomi そこでの評価よりも、ライブでの良し悪しのほうがいいかな。

Jan 美術館の展示品みたいな音楽をやっていきたいんですよね。ずっとあるけど、行く日によって感じ取れるものが違うみたいな。ふたりの音楽というか、存在、佇まい、生活がすべてそういう風でありたい。東京の街を漂っていて、いろんなところで観れて消えていく。そういう芸術作品としてやっていけたらいいなって。だから、自分たちの感覚と完全に合致するビデオができればいいけど、そうでなければイヤかな。

――すごく正しい考え方だと思います、今度ライブ観に行きますね。今日はありがとうございました!

高円寺・LSDスタジオでのセッション
「DAB♭」
jan and naomi

アコーステックでのセッション
「Cranberry Pie (acoustic)」
jan and naomi

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jan and naomi | ヤン アンド ナオミ

Jan(GREAT3,Jan Urila Sas) とNaomi によるデュオ。2012 年、渋谷百軒店で各々が活動しているときに出会う。2014 年2 月、1st シングル「A Portrait of the Artis as a Young Man/time」を《Hot Buttered Record》より7inchレコードで500 枚限定リリース。10 月に1st EP「jan,naomi are 」を発表。2015 年3月『サウンド&レコーディング・マガジン』 Premium Studio Live Vol.9「Crescente Shades」INO hidefumi+jan and naomi を配信にてリリース。2016年6月、2ndEP "Leeloo and Alexandra" をリリースし、全国ツアーを敢行。ツアーファイナル・ワンマンを品川キリスト教会グローリア・チャペルで行なった。7月、フジロックフェスティバル2016に出演するなど注目を集める。トウキョウアートブックフェアや、アニエス・ベーなどアートやファッションイベントでのライブやモデル出演も多数。映画『Amy said』(村本大志監督・2017年公開予定)で、初の映画音楽を手がける。
http://janandnaomi.com
https://www.facebook.com/janandnaomi

jan and naomi 主催によるレギュラーライブイベント
「Roarers on the road」(渋谷Bar Music 第1金曜)
http://barmusic-coffee.blogspot.jp
「Upstairs」(富ヶ谷Callas 第3or第4土曜)
http://callastokyo.com