話題のブランドの現在を追跡!<br>THEEが提案する 本当の“ベーシック服”とは?

話題のブランドの現在を追跡!
THEEが提案する 本当の“ベーシック服”とは?

2015SSコレクションでデビューを果たした「THEE(シー)」。究極のベーシックを標榜する同ブランドは、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインとユニークなカッティング、そして心地よい素材感が持ち味だ。合わせる服を選ばない汎用性の高さと、それでいてしっかりとした存在感があるラインナップは、多くのファッショニスタから注目を浴びている。改めてその興味深いアイデンティティを探るべく、デザイナーにお話を伺った。今求められるベーシック服の条件とは? そしてこれからのヴィジョンとは?

——まずは特徴的なブランド名の由来と、そのコンセプトについて教えてください。

「“THEE”は昔の文脈にしか使われなくなってしまった言葉、いわゆる古語の “you”に由来しています。この言葉を掲げた理由としては、人と人との繋がりというものが根本にあります。ブランドを始める前に、なんとなく自分が設定したテーマやイメージを洋服に落とし込んでいくというより、人と人が繋がる事が生まれるような活動をしていきたいというプロットがありまして。そこから“状況で出会う形の提案”というコンセプトが生まれました。人と人の繋がりというのは、一人称(I)と二人称(YOU)という関係性から始まるので、ブランドを通して“あなた”という対象に向かって、いろんな人の出会いや繋がる事のキッカケが届けられるようにしたいと考えました。それでTHEEという名前になったんです。今、ブランド名は言葉を組み合わせた造語のほうが多く見受けられますが、使われなくなった言葉を選ぶほうが自分らしいかなとも思っています」

——そんなブランドの在り方を象徴しているアイテム(アイコン)といえば何になるのでしょうか? 

「スリットシャツですね。いわゆる布帛素材のカットソーですが、シャツをベースにTシャツやポンチョといった好きなアイテムの好きな部分を自分の感覚でサンプリング & エディットして作成したのですが、半分まぐれでできたようなアイテムだと思っていて(笑)。特に気に入っていますね。世界中にある超長綿の原種と言われるペルー産のペルヴィアンピマを旧式の機械で作った綿花を使用し、パナマ織で仕上げています。糸から開発するのではなく、古くからあるモノを今の時代性に寄せてデザインするというのが、THEEらしいかなと思っています。服作りに関しては、高品質ベーシックというものではなく、着方や着こなしをイメージしてワクワクできるようなデザインや要素を、常に忍び込ませるように意識していますが、スリットシャツはそれが特に表現できたものだと思います。一枚物としてだけではなく、レイヤードやベストとしても使えるので、人それぞれの解釈やその日の気分でいろいろなコーディネイトを楽しんで頂ければ嬉しいです」

——なるほど。デザインやモノづくりの面で意識している年代や国、都市、カルチャー、様式といったものはありますか?

「国は関係なく90年代のカルチャーが自分自身のほとんどを形成していると思います。ファッションでいえば、ラフ シモンズやシュプリーム、そしてナンバーナインなどもあって、音楽ならヒップホップやグランジもあったりと、すべてが刺激的で面白くて、同時期にいろいろなものを体験できたことは大きかったですね。90年代は、なんかすごくいい空気感だったなと思います(笑)。今の時代の洋服は、例えば原料にしても情報がすぐ手に入るので、すごい情報の渦の中に引っぱられる感じがします。ただ、90年代という時代性やその空気感は、自分のなかでデザインとして無意識に表現している部分かもしれません。あくまでTHEEのデザインは、常に今の時代を意識しています」

——素材感への強いこだわりも感じますが、どのような基準で素材作りやセレクトをしているのでしょうか?

「毎シーズン、まず始まりの段階でより多くの生地資料に目を通して、現場を巡っていくという感じです。原料からでも作りやすい時代になっているだけに、そこから作っていく工程の楽しさも好きですが、生地屋さんや機屋さんの得意としている素晴らしい生地や作り手の想い、こだわり等の話を聞いてイメージを膨らませて作っていくというのが基本的な手法です。自分が望む完璧な生地を作り出すことが、お客様にとって良いとは限らないので、ある種の制限があったとしても、自分なりに今の時代性にマッチするように解釈して、それを模索していくほうが自分にはしっくりくるやり方ですね」

——同様に、シルエット(パターンメイク)に関しても、ユニークさを感じますが?

「シルエットに関しては、アイテムごとにフォーカスポイントを決めていて、そのポイントをどのように見せるか?という事を明確に決めています。例えば、布帛素材は、シャツ特有の緊張感を襟ぐりのギリギリまで詰めて、逆に身頃や袖のパーツはカットソー特有のリラックスした感じで表現したりと、感覚的な部分を大事にしています。あと、全体的に少し大きめのサイズ感にしているのはこだわりです。だからといって単純にビックシルエットを好んでいるのではなくて、例えば“ゆったり”と“大きめ”というのは同じようなニュアンスでも違うと思っているんですね。アイテムごとに、そういう感覚的な要素を大事にしながらちょっとしたこだわりを反映させて、同じようなアイテムでもピッチを変えています」

——着方のバイエーションも多いですよね。

「そうですね。トップスに関しては、過去も含めたすべてのアイテムは、シーズンに関係になく組み合わせても、いろんな着こなしができるように考慮しています。裾口からの見え方であったり、襟ぐりの収まりだったりは、THEEのアイテムだけで合わせるというよりは、ある程度、どのブランドのアイテムと合わせても馴染むようにしています。完璧なシルエットの提案というのは、“こう着てください”と言われているようで、個人的にも好みではないので(笑)。どう着ようかな?と思いたくなるような、着こなしのワクワク感があるように、余地を残すように意識しています」

——なるほど。とはいえ、ブランドとしてイメージしている理想的な着こなしのようなものはあるのでしょうか? こういう着こなしがTHEEらしいというような。

「特にありません。毎シーズン発表しているLOOKも本格的な撮影ではなく、抽象的なイメージで自分たちで撮影しています。こちら側の提案やブランドイメージが先行するよりも、まずは、自由に楽しんでもらえればと思っています。 SNS等でショップの方やお客様の着こなしをよく拝見しているのですが、こちらも新たな発見があったり気付くことが多々あるので、僕自身も楽しませて頂いています」

——兵庫(地元)の産業の活性化を意識されているとのことですが、それに対する取り組みを簡単に教えていただけますか?

「ウチも小規模で自己資金で運営しているブランドですし、特に助成金を利用しているわけでもありません。そんなに大層なことを言える立場ではないですが(笑)。キッカケは、機屋さんたちが“生地を織ってはいるけど、デザイナーにも会ったことはないし、この生地でどのようなアイテムが作られているかも知らない”という話を現場でよく伺っていたことなんです。それは兵庫に限らずどこでも同じ現状があると思うんですが。どうしてもスポットはブランドに当たって、職人さんたちには当たる事は少ないため、後継者不足が顕著になっているんですね」

——そうなると技術が継承されていかないですよね。

「そうなんです。素晴らしい技術があっても継承していくことが難しい時代になっているんです。ウチが今、継続的に取り組んでいる播州織のハツトキさんのW-face生地は、30代の若い機屋さんに織って頂いているのですが、その方が入社して以来、播州全体でも後輩ができたことがないと伺っていてます。その生地は、元々100番単糸という超極細の糸で作られた素晴らしい生地だったんですが、透けてしまうのでメンズで使用するのは難しかったんです。それで風合いを活かしつつ二重織りで作れないか? という相談をさせていただいて、1〜2年ぐらいかけてできた生地なんです」

——織屋さんと共同で、新しい生地を作られたということですね。

「そうですね。ただ、超極細の糸を高密度で二重織にしているということもあって、ビックリするぐらい高い生地値になりましたけど(笑)。結果的に今ではハツトキさんでも定番化されていますし、女性のテキスタルデザイナーさんが柔らかい色目の組み合わせを気に入っているということもあり、互いに話し合いながら様々なアイテムや企画で使用させてもらっています。僕が今できることは、ほんの小さなことですし、お取り組みしている方々との“ 共有/共感 ” だと思っています。各々が違う役割で、視点も違いますし、ましてや対象者が違うという事になりますので、それを補っていくというよりは、交わる事が相乗効果になると思っています。個人でできる事は限りがありますが、コラボという形式をとって、THEEというハブを通して一人でも多くの方に興味を持っていただける機会になればと思っています」

——今後もそういった取り組みはされていくんですね。

「はい。2016AWコレクションではThe Attractmanという関西の素晴らしいリプロダクトをリリースしているブランドさんともコラボしていますが、今後も東京というよりは、地方で活動している素晴らしいブランドさんや機屋さんたちと積極的に関わりながら、継続していきたいですね」

——そういった日本のモノづくりは、ファッションに関しても世界的に評価が高まっていますが、世界へ向けて発信していくという意識はあるのでしょうか?

「海外へ向けるとなると日本とはニーズが変わってくるわけですから、対象となる“あなた”が変わってしまいます。THEEは、強いデザイン性があるわけではないので、現状の動向を見ている限りでは、海外は海外、国内は国内と分けて考えないと難しいかなと思います。まずは自分の身近なところから少しずつ広がっていければいいですね」

——なるほど。最後に、これからのビジョン、目標を教えてください。

「特にこうだという具体的なプランがあるわけではなくて、目の前にあることをやるだけです。自分のペースで、周囲と共に少しずつ成長していければ思っています」

THEE(シー) 2015SSシーズンよりスタート。「究極のベーシック服」をコンセプトに、普遍的なデザインと着心地の良さを追求したコレクションを発表している。単なる高品質なミニマル服とは一線を画する、着る者の自由な発想で多様なコーディネイトが楽しめる新たな洋服の在り方を提案。ブランド名は、“汝”(現代の言葉でいう“YOU”)に由来している。

ブランドを象徴する布帛素材のカットソー&タンクトップ。ゆったりとしたスリーブや長さの異なる前後の身頃など、シンプルでありながら多様なエッセンスが盛り込まれている。各々で着てもレイヤードしても楽しめるため、装いの幅は広い。
カットソー 各¥12,000(+tax)/THEE
タンクトップ 各¥7,500(+tax)/THEE

こちらは、リネンレーヨンを使用したカットソーとノースリーブ。うっすらと透け感のあるボディは、夏の重ね着の幅を広げるだけでなく、1枚で着れば清涼感が満点だ。
カットソー 各¥8,500(+tax)/THEE
ノースリーブカットソー 各¥7,500(+tax)/THEE

シーンを限定しないボーダーのカットソーは、ピッチの異なる2パターンで展開。ウール地のスラックスは、ダブルの裾に2タックというクラシックな意匠で、こちらもゆったりと着られる。
カットソー 各¥9,000(+tax)/THEE
スラックス ¥18,000(+tax)/THEE