SHIPS MAG

search

フリーワードから記事を検索

SHIPS MAG

PEOPLE

いま会いたい話題のひと

ライムスター・宇多丸氏が語る “俺に言わせりゃ” これが気になる2016年!

ライムスター・宇多丸氏が語る
“俺に言わせりゃ” これが気になる2016年!

言わずと知れたライムスターのラッパーであり、ラジオ・パーソナリティという顔も持つ宇多丸氏。そんな多才な氏をスペシャルゲストに、2016年初回のSHIPS MAGらしく、大胆にもノンジャンルで今年気になるものを語っていただきました。その視点の先は、ゲームから映画、かつての大阪万博から東京オリンピックの行く末、はたまた自分たちの主催するフェスのお話まで、こちらの予想を遥かに超えた引き出しの多さとスケールの大きさでした。ただ、これはあくまで取材時(2016年1月下旬)にご本人が気になっていたものですので、そこをご理解のうえお読みください!

styling: Rie Kobayashi

『クリード』はもう好き過ぎて、
サントラで思い出して涙する状態がまだ続いてます

――ノンジャンルで今年気になるものというのはかなり大きなテーマですが、宇多丸さんがピンとくるものはありますか?

宇多丸 あくまで今ということで言えば、最近はもうフォールアウト4しかやってないんですよね。XBOX版も出ているんですが、僕はPS4でやっていて。もう時間があるとこればっかり。関連グッズの服とかキャップとか買っちゃったりしてますから。トレーナー買ったらキャラクターが描かれている可愛いもので似合わなかったりもして(笑)。

――簡単にいうとどんなゲームなんでしょうか?

宇多丸 人気シリーズでずっと出ているんですけど、舞台はボストンで、核戦争後の世界で生き残っていく話ですね。もともとはアクションRPGみたいなジャンルなんですけど、いわゆるシューティングゲームみたいにも遊べるし、もちろんミッションをクリアしなくてもよくて、ちょっと育成ゲームみたいな要素もあったりして。集落があってそこの住人たちが満足するように集落を作ってあげたりとかもできるんで。あと建築もできるんですよね。資材を集めてきたりして。それでバカ建築作ったりとかね(笑)。とにかく無限に遊べちゃうんで。マップももうボストンを丸ごと作れるぐらいというか。

『Fallout4(フォールアウト4)』
2015年12月に発売されたオープンワールド・アクションRPGゲーム。「Vault111」と呼ばれる核シェルターの唯一の生存者が主人公。

――かなり複合的なゲームなんですね。

宇多丸 そうですね。今だとオンラインゲームが主流ですけど、フォールアウト4は、すごい思い切りがよくてオンラインがないんですよ。一人用って書いてあって(笑)。いまどき、ちょっと珍しい潔さというか。僕はあんまりオンラインとかはやらないんで自分のやりたいゲームに近いというか。現実から逃避したいのに、オンラインだとなんで会ったこともないアメリカ人にFUCK!とか言われながら殺されなきゃならないんだって思っちゃうんですよ(笑)。

――ちょっとわかりますね(笑)。どのぐらいの時間やられているんですか?

宇多丸 ゲームの難易度も調節できるんで、自分よりもちょっとだけ弱いAIを相手に、延々と遊んでいられるという感じですね。もう始めると12時間とかやってますよ。前は24時間ぶっ通しでゲームやって具合悪くなったりしてたんですけど、結婚以降としては最長でやってるゲームですね」

――なるほど。それだけハマっているフォールアウト4と同等に他に気になるものはありませんか? 1月末現在で。

宇多丸 もう今の時点で公開している劇場も減ってきているんですけど、映画の『クリード』ですね。ロッキーの続編というかスピンオフというか。クリードは去年の暮れぐらいから公開されて、観たときからすごい好きだったんですけど、もう好き過ぎて、サントラ買ってその場面を思い出して涙するという状態がまだ続いてますね。ラジオで映画評をやったあとって、どんなに好きな映画でも結構過去のものに感じちゃうんですけど、『クリード』に限っては違いますね。もう良すぎです。

――2015年公開映画のベスト1としては『マッドマックス』とおっしゃっていたと思うんですが?

宇多丸 そうですね。『マッドマックス』、『ミッションインポッシブル』、『スターウォーズ』というふうに挙げてますけど、『クリード』は3位以内は余裕ですね。『スターウォーズ』は抜きますね。好き度で言ったらベストですね。もう、最高すぎです! かなり好きですね。最初聞いた評判でロッキーのなかで一番いいって言っている人がいて、そんなわけないでしょと思ったんですけど、意外とそれもなくはないなと。

――そこまで推奨するポイントはどこにあるのでしょうか?

宇多丸 そうですね、懐古主義的な作品ではなく、今を生きる若い世代のための映画になっているし、音楽の使い方もむちゃくちゃ格好良くて。フィラデルフィアがロッキーの舞台なんですけど、それにちなんだヒップホップやR&Bとか、昔ながらのフィリーソウルとかの使い方も上手いし、昔のロッキーのビル・コンティのテーマあるじゃないですか、あれを使い過ぎないっていう。でもロッキーぽさを残しつつなんだけど、クライマックスのシーンの最終ラウンドで、あのビル・コンティのファンファーレが鳴り響くわけですよ! もう、そことかがもう! その前の段階から目から失禁しまくってて、もうジョージョー泣いているんですけど、もう散々泣かされたあげくにビル・コンティのファンファーレが鳴り響くもんだから、もう殺す気かよ!っていう感じなんですよ。もう体が嗚咽しちゃうぐらい泣いちゃうっていうのは久々ですね。もう僕だけじゃなくて、周りのおっさんたちもオイオイ泣いてましたから(笑)。

『クリード チャンプを継ぐ男』
『ロッキー・ザ・ファイナル』以来9年ぶりの続編であり、スピンオフ作品。主演はシルヴェスター・スタローンとマイケル・B・ジョーダン。監督はライアン・クーグラー。スタローンは同作品で、第88回アカデミー賞の助演男優賞にノミネート、第73回ゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞しています。

僕自身もライムスターも
ハブみたいな役割だと思っています

――宇多丸さんにそこまで言われてしまうと、今すぐ観たくなりますね(笑)。では、映画のお話が出ましたので音楽に関してはいかがですか。そういえば今年もライムスター主催のフェス「人間交差点」も開催されますが?

宇多丸 人間交差点に関しては、ヒップホップの大きいイベントがそんなにないなかで、なんとなく僕らができることがやれたらと思って始めたものなんです。

『人間交差点』
ジャンルやオーバーグラウンド、アンダーグラウンドを問わず多彩なアーティストが参加するライムスター主催の音楽フェスティバル。今年は5月15日、お台場野外特設会場にて開催されます。http://www.nkfes.com/

――もともとこのイベント自体のイメージはどんなものだったんですか?

宇多丸 僕らは日本のヒップホップのなかでは、他ジャンルとのコラボが一番多いグループだと思うんですね。それで僕らのグループとしての役割もそうですし、僕自身の役割もそうなんですけど、ハブみたいなものだと思っているんです。
コアなシーンとオーバーグラウンドなシーンの間にいるというか。境界線のようなところにいるというか。そこにいる自分たちだからできるのが交通係みたいなもので。そういうふうな存在になれればいいなと思っていますけどね。外側にいる人たちがコアなヒップホップに目を向ける入り口になれればいいし、逆にヒップホップが好きな若者たちが、もっと外の世界に目を向けたり他の世界に出て行くきっかけになればいいのかなと。どっちの踏み台にしてもらってもいいかなと思っているんですよ。

――そういう役割を宇多丸さん個人もされているということですね。

宇多丸 そうですね。映画評論とかもそういうつもりでやっているんですよ。もっとコアでちゃんとした映画評論もいっぱいあるわけですけど、評論そのものに触れたことのない人たちの入り口にななればいいなと思っていますね。そういう境界線でやりとりするのが、多分僕でありライムスターの役割なんですよ。

――それを形にした一つのあり方がフェスということですね。

宇多丸 まさにそうです。だから交差点なんですよ。

東京オリンピックの開会式と閉会式が今から心配なんです

――なるほど。それで話を宇多丸さんの気になるものに戻したいんですが……。

宇多丸 一つちょっと思い出しました。時事ネタ的な話なんですけど。実は先日、レーザーアイマックスという新しい形式で『スターウォーズ』を見るためだけに大阪に行ったんですよ。劇場が万博記念公園の近くにあるんですけど、ついでにと思って、万博記念公園にも行ったんですね。子供の時に一回行ったことのある太陽の塔に近づいてみたりもして。でも、70年代万博のパビリオンをまとめた当時の鉄鋼館という建物も残っているんですけど、そこも含めて、もう万博記念公園自体、人とか全然いないんですよ。入場料が250円かかるせいか反対側の映画館が入っているショッピングモールは半端じゃないぐらい混んでいるのに、公園はガラガラ。閑散としていて、ところどころに70年代万博の残骸があるわけなんですよ。

――それは興味深い光景ですね。

宇多丸 そうなんです。お祭り広場って書いてある何もない広い空間には、丹下健三デザインの屋根が一部だけが残ってて。だけどいっちゃえば、なんでもない場所で。なんだよ、これはと。これはもう“つわものどもが夢の跡”みたいなことになってるんだなって、さぞかし賑わってたのに今はこれかって思ったわけなんです。

――ちょっと寂しい状況なんですね。

宇多丸 それで当時の盛り上がりを示すパビリオンとか見て、これはもう東京オリンピックも、今はいろいろと盛り上がってやってるけど、きっとこうなるんだろうなってそこまで見据えて切なくなってきちゃって。

――そういう状況を見たら、確かにそう思うかもしれないですね。

宇多丸 何を今心配しているかというと、東京オリンピックの開会式と閉会式。これが非常に、世界に向けて恥ずかしいものをさらすことになるんじゃないかと心配しているわけなんですね。僕らが見せて恥ずかしくない日本をちゃんと見せられるのかな? って。70年代万博の映像を見ていたら、当時はさぞかし盛り上がったんでしょうと思うんですけど、やっぱり子供がブラスバンドで出てきて、なんかボヨーンとした神輿まがいのものを持ってたりとか、閉会式だと阿波踊りに合わせて、無理やり世界の人たちを踊らせたりしていて。これはもう、しっかり70年代万博も残念だった! ていうことがわかったんですよ。なーんだ、そうだよね、やらかしてたんだね、だから大丈夫って(笑)。東京オリンピックもやらかすと思うよって。そう確信したんですよ。万博記念公園に行って心構えができたという(笑)。

『大阪万博』
大阪万博とは、正式には日本万国博覧会のこと。1970年に大阪府吹田市の千里丘陵にて「人類の進歩と調和」をテーマに開催されました。東京オリンピック以来のビッグイベントに日本中が盛り上がったことは言うまでもありません。その跡地にできた公園が日本万国博覧会記念公園。岡本太郎氏が手がけた太陽の塔が、今でもシンボリックにそびえ立っています。

――過去の万博から2020年の日本の姿が垣間見られたわけですね(笑)。

宇多丸 ただ、やっぱり70年代万博は超調子こいてて、そこはいいんですよね。未来だー!って言って。だって太陽の塔ですよ。これがまたクソでかいんですよ。中に生命の木っていう動物の進化みたいなものがあるんですけど、超気持ち悪くて、B級なんですよね。なんか秘宝館ぽいっていうか。当時はめずらしかったんでしょうけど。今ああいう太陽の塔みたいなことをやろうと思ったら、すごい非難轟々だと思うんですよ。そもそも太陽の塔は、どうやって手とか支えてんのかも不思議だし(笑)。危ないでしょって。いろんな意味で感慨深かったですね。

――終わって時間が経つと東京オリンピックも寂しい残骸が出ることになるんですかね。

宇多丸 そうだと思いますよ。でも一つ発見したのが、万博記念公園の奥に民俗学博物館っていう博物館があるんですけど、これは素晴らしい。東京もそうなんですけど、みんなが集まる商業施設よりも国が本気で金をかけた場所に行くと半端ないっていう。そういうところに限って人がいなかったりするんですけど。やっぱり国家権力って半端ないなって思いますよね。それを味わう意味でも、万博記念公園の70年代パビリオンと民俗学博物館、これはマストであると言わせてもらいたいですね。でも、こんだけ大阪に行ったことを熱く語りましたけど、あさってのラジオでこの話しちゃうっていうね、多分(笑)。

SHIPS JET BLUEとも親交が深い宇多丸氏。ライトアウターは、同ブランドのMA-1型アウターとステンカラーコートを愛用しています。「かつてツアーで着たものを、そのまま買い取って着ています。MA-1は薄いので大きめなコートの中にも着れるんですよ。ステンカラーは、こんな色味はそれまで見たことがなくて。基本的に服は、ディテールで余計なことされるのが本当に嫌いなんで(笑)。無駄のないシンプルなデザインしか着ません。

photo

宇多丸 ライムスター・うたまる

ラッパー、ラジオ・パーソナリティ。
1969年東京都生まれ。1989年、ヒップホップ・グループ「ライムスター」をMummy-Dと結成。日本のヒップホップ・シーンを黎明期より牽引し続け、いまだに第一線で驚異的な活躍をみせている。また2007年にTBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』がスタートすると、ラジオ・パーソナリティとしてもブレイク。2009年には放送業界最高栄誉賞、第46回ギャラクシー賞「DJパーソナリティ賞」を受賞。近作は昨2015年7月発売のライムスター・アルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』および、同アルバムの全国ツアー映像作品『King Of Stage Vol. 12』。2016年2月27日にはラジオ番組からのスピンオフ本『R&B馬鹿リリック大行進 ~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』を発売。同5月15日にはお台場で野外音楽フェスティバル『人間交差点 2016』を主催する。
http://www.rhymester.jp/

RECOMMEND STYLE

この記事を読んだあなたにオススメのスタイル

PAGE TOP