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たまには旅の話でも −ゲスト 佐藤健寿さん−

たまには旅の話でも
−ゲスト 佐藤健寿さん−

トラベルカルチャー雑誌 『TRANSIT (トランジット)』の加藤編集長と、林副編集長による人気連載企画。今回は、『奇界遺産』の写真集で話題となり、最近はテレビ番組『クレイジージャーニー』の出演により幅広い層から注目を集めている佐藤健寿さんが登場! 『TRANSIT 佐藤健寿 特別編集号 美しき不思議な世界』も発売されたばかりということで、これまであまり語られてこなかった、写真のスタイルについてなど充実の内容となっています。

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実際に行ってみたら、エリア51がわりと面白くてというのが始まりです(佐藤)

ーーまずは、佐藤さんとお仕事をするようになったきっかけを教えていただけますか。

加藤 以前やっていた『NEUTRAL』という雑誌で、アシスタントの子に「すごくいい人がいるからどうですか?」って前のめりに薦められて。最初はコラムでしたけど、そこでお仕事をお願いすることになったんです。

ーーアシスタントさんは、どこで佐藤さんを知ったんですかね。

佐藤 10年くらい前に、僕が『X51.ORG THE ODYSSEY』という本を出して。UFOの聖地とか、ヒマラヤに雪男を探しに行くとかなんですけど、それもいちおう旅の本で。おそらくそれを見てくれたんだと思うんですけど。

ーーフォトグラファーの始まりとしては、やはり学校で勉強されたのですか。

佐藤 武蔵美術大学でひととおりやって、そのあとアメリカに留学して勉強しました。そのときに、アメリカの州を撮影してこいっていう課題があって。学校がサンフランシスコだったので、そういえばラスベガスの北にエリア51があるなと。あの辺は昔ゴールドラッシュがあって、いまはゴーストタウンなんですよ。それも兼ねて行ったら、面白い絵が撮れるだろうなと思って。実際に行ってみたら、エリア51がわりと面白くてというのが始まりですね。

ーー面白いというのは、どういう意味でですか。昔のUFO番組だと何もない風景が広がっていて、近づくと監視員に制御されるイメージがありますけど。

佐藤 あっ、でもわりとあんな感じで。監視員は常時いますね。近くにレイチェルという街があって、そこは世界中のUFOマニアが集まるUFO宿場町なんです。でも、景色はゴーストダウンというか、ヴィム・ヴェンダース的な世界が広がっている。アメリカの一番素っ頓狂な部分が、あのへんに集まってるかなっていう。

好きなことをやっている同士の関係だからストレスがない(加藤)

ーー加藤さんは、最初に佐藤さんの写真を見たときにどう感じましたか。

加藤 写真というより、佐藤さんの活動に共感した部分が大きいですね。彼の興味の対象が取材したいものとリンクする部分が多かったので、『奇界遺産』が出る前は、2~3回長い旅に行ってもらったり。でも、「これを撮ってください」というお願いではなく、「こういうエリアをやるんですけど、どういうテーマだったら面白いと思いますか?」という感じで。常にひとり旅ですし、『TRANSIT』のために撮影してくれっていう感覚はあまりなくて。そうこうしているうちに『奇界遺産』が話題になって、テレビにも出るようになって遠くに行っちゃった感じですかね(笑)

ーーいまや時の人ですよ。

加藤 周辺には彼と同世代のスタッフが多くて、好きな写真家とか映画とか音楽とか、感覚も近い。健寿さんはうちの代表(サーフェン智)とも、『TRANSIT』の撮影でモロッコ行ったり西海岸行ったりしていますからね。

ーーフィーリング的にも合ったんですね。

加藤 お互い説教臭いのは嫌いだし。流行りを追いかけているわけじゃなくて、好きなことをやっている同士の関係だからストレスがない。旅で揉めるのは予算くらいじゃないですか(笑)。まぁこっちが悪いんですが……。

ーー佐藤さんは文章もご自身で書かれますよね。そのスタイルというのは昔からですか。

佐藤 ひとりで勝手に行っていたんで、写真だけ撮って文章を人に書いてもらう感覚がそもそもなくて。いいのか悪いのかわからないですけど、写真を撮りながら文章を考えたりもするし。自分のなかでは分けて考える感じのものではないですね。

ーーおふたりで旅をしたことはあるんですか?

佐藤 何回か誘われたんですけど、やんわりと…。

加藤 やっぱり書くテーマが違うのと、仕事で人と旅するタイプじゃなさそうなので。プライベートの旅行なら別でしょうけど。

佐藤 加藤さんと一緒に行った写真家はことごとく喧嘩してるから、行ったら終わるかなと思って(笑)

加藤 でも、健寿さんの行った場所が2~3年後に一般的に知られたり、時代が追いかけてきている感じはしますね。一方で、これから行くところはどんどんハードになってしまうのがネックというか、それが難しいところ。でもタイミングが合えば1年に1回くらい、長い旅の撮影をお願いしたいですね。

ーー加藤さんが佐藤さんにお願いするときは、普通のカメラマンさんにお願いするのとはスタンスが違う感じですか。

加藤 彼は何を言ってもあんまり驚かないんですよね。例えば、僕が何も調べずに「タヒチを通ってイースター島がゴールの旅で、そのエリアを点々と撮影して欲しい」と言っても、「調べます」「行きます」「行けません」みたいに早いんですよね。行く方法をちゃんと自分で見つけられる人。他のカメラマンやライターさんだと、そこまでフットワークが軽くないというか。本人の興味と合えば話が早いんです。文章もズバリのものが上がってくるので、ハズしがないですね。あと、「コーディネーターさんはいるんですか?」って聞いてこないのがいいですよ。

佐藤 それは「予算ありますか?」と同じ意味だから、『TRANSIT』においては愚問です。

ーー逆に、佐藤さんにとって『TRANSIT』の仕事と他の仕事に違いはありますか。

佐藤 旅の雑誌はいくつもあるんですけど、仕事をしたいと思うものはひとつもなくて。そのなかで、『TRANSIT』は楽しそうにやっているのがいいなと。つまり、良くも悪くも同人誌的な作り方をしていて、ドタバタなんですよね。共感する部分といえば、僕が見てもマニアックなことをしているのに、全体としてはオシャレで間口が広い。旅オタクのものにしていないし、かといってバックパックカルチャーどっぷりでもなく、もちろんセレブ旅でもない。まさにニュートラルで、その感じっていうのは僕もすごく意識しているんですよね。昔UFOの本を出したんですけど、それもUFOオタクに向けたものではないですし、デザインはかっこよくしたいと思っていましたから。

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この感覚が伝わったのは、テレビのおかげもあるのかもしれません(佐藤)

加藤 『TRANSIT 佐藤健寿 特別編集号 美しき不思議な世界』の出来はどうですか?

佐藤 いいと思いますけど…う~ん、もっとできたようにも思いますけど。でも満足してるし評判もいいですよ。世界不思議大全のページは、もう少し詰めてやれたかなと思う一方で、あまりやっちゃうと読者を遠ざけてしまいそうな気もして。あと、紀行文以外はわりとカタログ的というか入門的。『奇界遺産』よりも僕の持っている要素を入れられたので良かったです。

ーーこれまで『NEUTRAL』や『TRANSIT』でお仕事されたものを集めているんですよね?

加藤 そうです、健寿さんの人気が出たので乗り遅れないように(笑)。でも、やっていることはずっと変わらないので、やっと気づいたかとは思いますね。それと旅のスタイルって両極端になっている気がして、沢木さんとか藤原新也さんとか、そういう層が僕らの上にどっかり雨雲のようにいて。下の世代は「旅に出れば自由になれる」みたいな詩と加工しまくったコラージュみたいな写真で「いいね!して」みたいなので。自分が読みたい旅の本が少ないので、興味は変わってくるとは思うんですけど、同世代が楽しめる本を一緒に作っていければと思っています。いま『TRANSIT』も大人めにリニューアルをしているので、そこでも一緒にできればと思います。

ーーこの『佐藤健寿 特別編集号』を発売するにあたって、佐藤さんはどんなコンセプトを立てたのですか。

佐藤 僕は監修的に意見を出したくらいの感じだったんですけど。正直、めちゃくちゃな世界観だと思うんですよ。表紙は宇宙ロケットだし、なかにはUMAも入っているし、アジアの珍寺とか旅の内容自体も、対談の人選もめちゃくちゃで。でも、それが一冊になったときに、ある程度説得力を持って伝わるくらいには、世の中に自分の活動が広まっているんだと思ったんですよね。普通、この内容で他の人が出したら「なんだこれ」ってなると思うんですよ。でもこの世界観が違和感なくある程度の人に受け入れられるようになったのは、テレビのおかげもあるのかもしれません。

ーーやっぱりテレビの影響力には驚きましたか。

佐藤 自分としては10年くらいこういうことをやっているし、『TRANSIT』でもずっとやってますから。自分がやってきたことが、ふっと世の中に知れたというくらいで。それで本がめちゃくちゃ売れるようになったわけでもないですし。昨年、7冊本が出たんですけど、その半分以上は一昨年の段階で企画されていたものなので、テレビに出たおかげで本がバンバン出るようになったわけではないですね。でも、その辺を歩いていると「クレイジージャーニーの人ですよね?」って声をかけられることは増えて、それはあれですけど…。

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自分でも思ったのは、子どもの頃に好きだったものそのまんまだなって(佐藤)

ーー興味の対象というのは常に複数あるのですか。

佐藤 そんなこともないですが、特別編集号を出して自分でも思ったのは、子どもの頃に好きだったものそのまんまだなって。恐ろしく男の子的な話だなって。UFOもそうだし、ナチスとか宇宙ロケットとか、本当にそのままをいまだにやっている。だから、「次は奈良で」とか言われたら撮れないですね。

ーーそういう仕事も来そうですが。

佐藤 たまに間違って来ますけど、それはそれなりにやります。でも、そういう題材は自分の個性を出せないんじゃないかなって。

ーーでも、自分の興味があるとこならバシッと絵が見えるわけですよね。

佐藤 バイコヌール(カザフスタンにあるロケット発射場)を撮れって言われたら、「そうそう他の人には負けないぞ」とか思うんですけど。

加藤 表現者や同業者で憧れの人はいますか?

佐藤 同業者は別にいないですね。特別編集号で「対談の人は誰がいいですか?」と聞かれたときも、最初は全然いなくて。

ーー佐藤さんは写真が先なのか興味が先なのか、そこらへんが面白いですよね。一般的にフォトグラファーは写真というか絵が先だと思うんですけど。

佐藤 普通とは逆かもしれないですよね。

加藤 どう撮れば自分が出るとかを考える写真家が多いなかで、彼はそういうのをすっ飛ばして、とりあえず行っておさえるというのが大きくて。技術的なものはアメリカでも学んでいるし、どちらかといえばジャーナリスティックな写真ですけど、画角はきっちりしていますし。でも、そこに情念みたいなのをヘンにのせないのが、すごくいいなと思うんです。

ーーひとつのスタイルとして、いいなということですよね。

加藤 そうですね。移動しながら撮っていくっていう、キチッとした写真ですね。でも彼の写真は表紙でも結構使ってるので、情念的な写真も時間があれば撮れる。カメラマンにとっても悔しい存在だろうし、ライター的なスタンスの人からしても「簡単に行っちゃうんだ」みたいな感じで新しいですよね。「行こうと思えば行きますよ」「行けないものは行けないし」みたいな。『TRANSIT』もそういうスタンスでやっていて、ネタにはこだわるけどスタイルにはこだわっていないので。テレビと雑誌の違いは何かありますか?

佐藤 やっぱり違いますね。テレビだとしたら、これ(特別編集号の表紙)は無理だと思うんですよ。カッコイイとは言われると思うんですけど、わからないと思う。これだけ禍々しいものがあって、そこにかわいい女の子がいるっていう、このシュール感はテレビで見せても伝わらないし、誰かが説明しても伝わらない。なので、感覚的にはこの10~20倍くらいわかりやすくしないといけないですね。『クレイジージャーニー』の方たちは、それでもかなり頑張ってくれているほうだと思いますけど。だけど、やっぱり全然違いますね。コメントを求められても、文章なら時間をかけて作って、伝わるか伝わらないかのところまで突き詰めますけど、そんな難しい表現は求められていない。「旧ソ連が~」と話しても仕方がないので、「いやぁ、すごいっすよ」とかで終わっちゃう。それでもふわーっと流れるから、まぁいいかなって。ですから、本当に言いたいことは本で言えればいいかなと。どっちが上とか下とかではなくて。

ーーテレビカメラと一緒だと、やりづらさはあるんですか。

佐藤 『クレイジージャーニー』は、すごくこちらのことを理解してくれているので、やりづらくはないですね。

インディージョーンズか、UFO研究家になりたかった(佐藤)

ーー佐藤さんにとって、写真を撮りに行くことは「旅」なのですか。

佐藤 そこも不可分で。旅が好きなのかと聞かれれば、好きな部分は多々あるんですけど。最終的には、写真を撮ってそれを自分の本に入れたいから旅をしている部分が強い。だから、旅そのものは淡白なんですよ。地方の名産品とかほとんど食べないし、海外で日本食があったら初日から行きますし。ホテルとかも、立地と値段が一番いい場所を探すので、旅情とかはまったく求めない。よくインタビューで「いままで食べたもので一番美味しかったのはなんですか?」って聞かれるんですけど、本当に何も記憶がないんです。

ーー「旅の思い出は?」と聞かれたら、撮影した現場になるのですか。

佐藤 思い出は、撮影現場と全然違うところをふと思い出したりしますね。バスに乗っているときとか、どうでもいい瞬間をあとで懐かしんだり。撮っているときは必死で、あまり覚えてなくて。

加藤 旅の道程とか、そういうのがネタになるよね。そこからストーリーができあがるパターンが『TRANSIT』は多い。突然だけど小さい頃は何になりたかったのですか? 考古学者?

佐藤 インディージョーンズみたいな感じになりたかったんですけど…、わりと本気で。

加藤 (笑)。でも近いと思いますけどね、21世紀型の。

佐藤 インディージョーンズか、UFO研究家になりたかったんですよ。でも、UFO研究家は大人になるにつれ、ちょっと違うかなって。じゃあ、インディージョーンズ的なものってなんだろうかと考えて。もし考古学者になっていたら、もっと地味だったと思うんですよ。だからある意味、今のスタンスで良かったかなって。

加藤 ひとつの職業にとらわれなかった? UFO研究にしてもエジプト研究にしても。でもナチスとか旧ソ連とか、いろいろなことをやっているけど?

佐藤 普通は、そういうことをやっていく過程でひとつに絞られるんでしょうけど。それも生活の必要性に迫られてが多いと思うんです。僕は幸いにも広く浅く、写真も文章も含めて、そのままずっと来てしまっているので。今となっては、逆にそれが個性なのかなと思っていて。例えば、ロケットだったら僕より喋れる人はたくさんいますし、UFOでも僕より詳しい人がたくさんいます。旅行でも写真でもいっぱいいるけど、このレンジでってなると、あんまりいないのかもしれないというのは、10年やって気づいたことですね。

加藤 昆虫とか持ってこられたら、ちょっと引いてしまい載せられないですけど(笑)、でも、旧ソ連のロケットならOKみたいな感覚はあります。チョイスするものが、いちいちこちらの好きなものばかり。

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観光客のおばちゃんみたいな気持ちを常に自分のなかに持っていたい(佐藤)

ーー佐藤さんのツボってどこにあるんですか。

佐藤 それは場所によりけりですけど…。例えば、この宇宙ロケット(特別編集号の表紙)を撮ったときは、夕飯をキャンセルして、ひとりで抜け出して撮影に行ってたんですよ。この街はあまり自由に移動できないんです、許可が必要で。最初はロケットを撮っているんですけど、それだけだと「団地にロケットがある」という状況以上のものはなくて。何か次の要素を待っていたら、そこに女の子が遊びに来たんです。さらに、逆側からベビーカーを押したおじさんが来て。その瞬間に「あっ」という何かがあるんですよ。それは中和する何かではなくて、異化効果というか。報道写真の基本なのかもしれませんけど、それがプラスされることで自分の作品になったというか。人によっては、純粋にロケットをキレイに撮る人もいるだろうけど、僕の場合は「ロケットと子ども」だった。

ーー題材としてはジャーナリスティックなものが多いですが、そういう目線を持ちつつ、アート的な表現も意識されるのですか。

佐藤 技法というのはいろいろあって、アメリカはいろんな技法を教えてくれるんですけど。最終的にそれで何を撮るかは、その人自身のコンテンツが出てくると思うんです。世の中には、ヴィムベンダース的なものやマグナム的なものを好きな人がいっぱいいるじゃないですか。そういう人は街に出てマグナムっぽいことをやるわけですけど、そこにUFOをぶつける人はいないと思うんです。意識はしていないですけど、僕の場合は結果的にそうなったんじゃないですかね。何を撮るかというときに、自分が生理的に一番好きなものを選んでいたというか。

ーー生理的に好きなものが、ここまで変わらないのもすごいですよね。

佐藤 みんな変わらないと思うんですけどね。

ーーカッコつけてるだけで。

佐藤 そう、カッコつけてるだけで。変わったと思っているだけ。僕はいまだにフランスの食器とかわからないですもん。人それぞれですけど。松浦弥太郎的な世界とか、UFOとか古代遺跡ほど根源的な興味がわかないですね。

加藤 旅もそうだけど、大きくなるにつれて周りに影響される。ロンドン、ニューヨークには行っとかないと、みたいな。自分の興味よりも、雑誌に引っ張られたり人に引っ張られたり。『ヴァージンスーサイズ』が好きといいながら家では『ハムナプトラ』観てましたから。僕。

ーー一方で、デザインはきれいにしてますよね。読者を入りやすくしている。

加藤 デザインが引っ張っている部分は大きいと思いますね。マニアックなものをそのまま出しちゃうと、そういう人たちしか手に取らないですし。でも、結構オーソドックスな作りだと思いますけどね。

ーー佐藤さんも過剰な絵作りはされないですよね。

佐藤 どこか心のなかで素直に撮ろうというのがあって。被写体が十分に強いので、そこをへんに煽って「俺の画角」みたいにするのは気恥ずかしい。観光客のおばちゃんみたいな気持ちを常に自分のなかに持っていたい。

ーーそれは何故ですか?

佐藤 それが素直な画角だから。いろんな人がいていいと思うんですけど。例えば、ある場所に行ったとき、「この画角はみんな撮ってるから違う画角を探そう」っていう人もいると思うんですよ。でも、僕はそもそも作品という意識があまりないので、一番よく見える場所に行って撮ったほうがいいと思っているんです。歴史のなかで培われた正解じゃないですか。個性を出すとすれば、それ以外の要素で考えるというか。被写体が強い分わかりやすいですし、人から「わぁ~っ!」て言われやすい。そこで自分を勘違いしないためにもですね。『奇界遺産』では漫☆画太郎先生にイラストを描いていただいているんですけど。あれを入れたのは、わざと写真集を壊したかったんです。僕がすごいんじゃなくて、奇界遺産がすごいわけですから、あまりに僕の作品然としてしまって「僕の写真がすごいでしょ」となるのはちょっと違うなと思って。恥ずかしさがあったので、画太郎先生を入れてちょっと薄めたというか。結果的に濃くなってしまったんですけど。

ーーだいぶ濃いですよ!

「絶対に持っていく」というものはなるべく減らそうとしています(佐藤)

加藤 今年も本はハイペースで出していくのですか?

佐藤 いやいや、もう打ち止めです。昨年は茂木健一郎さん並みのペースでしたから(笑)

ーーでは、最後に旅の装備でこだわっていることを教えてください。

佐藤 普段から心がけているのは、「絶対に持っていく」というものはなるべく減らそうとしていますね。なるべく汎用品にしたいんです。懐中電灯を買うときも、乾電池式か充電式だったら、なるべく乾電池式を買うようにしています。日本にはなんでもあるから錯覚するんですけど、海外は何もない場所が多いですから。コンタクトにせず眼鏡にしているのもそういう理由です。

ーー服装は?

佐藤 服装は今日みたいな感じです、日本にいるときとあまり変わらない。ダナーライトはずっと履いてますね、もう3足目くらい。5年履いて買ってを繰り返しています。ダナーが良いのは、レストランに行くときもギリギリ文句を言われない範囲なんですね。街にも行けるし、山にも登れるし、オールラウンダー。これよりも本格的だと、飛行機に乗るときにしんどかったりするので。

ーーなるほど。今日はいろいろな話が伺えて面白かったです。ありがとうございました!

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よく使うカメラは「ライカM-P」、またM型のレンズやオートやズームレンズも使える最新の「ライカSL」もお気に入り。フィルムで撮影するとききは「プラウベル マキナ」を使用。ナイロン生地でできた、珍しいDOMKEのカメラバッグは常に使っているとか。

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リモワのパイロットケースは、機内持ち込みが可能で蓋が上部に開くので飛行機のなかなどでも出し入れがしやすくお気に入り。カメラだけでなく、着替えなど旅グッズもここに収納することが多い。足もとは汎用性の高さが魅力のダナーライト。

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『TRANSIT特別編集号』

佐藤健寿氏による特別編集「美しき不思議な世界」。2008年から2015年にかけてTRANSIT誌上で佐藤氏が発表してきた作品の総集編。めくるめく世界の美しくも珍奇な光景の写真に、旅の振り返りや、これまであまり触れられてこなかったバックボーンに迫る新規企画を加えたスペシャル号は絶賛発売中。

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加藤 直徳

1975年東京生まれ。編集者。出版社で『NEUTRAL』を立ち上げ、現在はeuphoria FACTORYに所属。トラベルカルチャー誌『TRANSIT』の編集長を務めている。佐藤健寿氏が特別編集した「美しき世界の不思議」が発売中。ローマと奈良を特集したTRANSIT 32号は3月18日に発 売。
www.transit.ne.jp

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佐藤 健寿

武蔵野美術大学卒。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)は異例のベストセラーに。著書に『世界の廃墟』(飛鳥新社)、『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』『ヒマラヤに雪男を探す』『諸星大二郎 マッドメンの世界』(河出書房新社)など。近刊は米デジタルグローブ社と共同制作した、日本初の人工衛星写真集『SATELLITE』(朝日新聞出版社)、『奇界紀行』(角川学芸出版)。2016年1月29日には、トラベルカルチャー誌『TRANSIT 佐藤健寿特別編集号~美しき世界の不思議~』(講談社)が刊行予定。NHKラジオ第1で「ラジオアドベンチャー奇界遺産」、テレビ朝日「タモリ倶楽部」、TBS系「クレイジージャーニー」ほかテレビ・ラジオ・雑誌への出演歴多数。
http://kikai.org

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