SHIPS MAG

search

フリーワードから記事を検索

SHIPS MAG

PEOPLE

いま会いたい話題のひと

SNS発信で世界的なフォトグラファーへと転身! 〜濱田英明さんが明かす、子どもの写真への思い〜

SNS発信で世界的なフォトグラファーへと転身!
〜濱田英明さんが明かす、子どもの写真への思い〜

暮らしを豊かにするためのライフスタイルブランド「SHIPS Days」のカタログにて、毎号素敵な写真を撮影してくれているフォトグラファーの濱田英明さん。そんな濱田さんは、なんとInstagramのフォロワー20万人超えを誇り、日本はもとより海外でも注目度が高い。そんな彼のユニークな経歴と、ネット経由で世界で話題になった子どもの写真についてお話を伺いました。

photo

Flickrに子どもの写真をアップしていたら海外から反響が

――濱田さんはフォトグラファーになる前はwebデザイナーをやられていたんですよね。

濱田 でも、最初からデザイナーになろうと思っていたわけではないんですよ。もともと大学時代にバンドをやっていて、就職活動もせずに続けていたんです。それで、バンドを続けるために、シフト制で土日が休めて、スーツを着なくていい仕事を探していたんです。大学卒業のタイミングで、心斎橋に東急ハンズがオープンすることになって。たまたま採用されたのが、チラシとかポップを作る宣伝の部署だったんですよ。そこでMacを触ったのが最初ですね。

――そうなんですね。バンドをやられていたときに、Macでフライヤーを作っていたりとかもなく。

濱田 フライヤーは作っていましたけど、手作業で切り貼りしてコピーするようなアナログ方式でしたね。なので、仕事先でイチから教えてもらった感じです。そのうちバンドのホームページも自分で作るようになって。その後、結局仕事を3回くらい変えるのですが、最終的にウェブデザインの仕事が中心になって。

――そこから、どうやってフォトグラファーになられたのですか。

濱田 写真には学生の頃から興味があって、撮ってはいたんです。でも本格的にではなくて、当時流行ったLOMOみたいなフィルムカメラを使った、いまの若い子がiPhoneで撮影するのと同じような感覚だったと思います。その後に結婚して、子どもが生まれてから徐々に本格的になっていったんです。

――お子さんたちを撮影した写真集『Haru and Mina』は、最初に台湾で発売されたんですよね。どういう経緯だったのでしょう。

濱田 最初は親として当たり前のように子どもの写真を撮って、ブログで発表していたんです。当時は子育てブログで背景をボカした写真を撮るのが流行っていて。自分も同じような感じでやっていたのですが、だんだんそういう横並びの表現に疑問を感じ始めて。それで、もっとよく見せたいと思った頃に、中判フィルムカメラと出会ったんです。そのカメラで撮影したら、同じ撮り方なのに格段にいい感じになって。その頃ちょうどFlickrが流行り始めて、そっちにアップするようになったら、海外のいろんなところから反響があったんです。その反応が一番良かったのが台湾だったんですよ。

――へぇ〜、そういうことだったのですね。当時、ブログとFlickrは同じテイストの写真をアップしていたのですか。

濱田 ちょうど境目だったので、自分でもどう分けていこうかとは考えていました。そのうちにブログへの掲載がフェードアウトしていきました。ブログは写真をキレイに見せる場所としては向いていないと思ったんです。Flickrは写真だけで感じてもらうみたいな場所だったので、こっちのほうがいいなって。そうしたら、世界中のクリエイティブ系WEBマガジンみたいなものに紹介されるようになって。

――すごいですね。

濱田 そういうWEBマガジンは、ひとつに載ると他の国の同様のサイトにもどんどん転載されて勝手にひろがっていくんです。自分ではそういうつもりではなかったので、「みんながいいと思ってくれている」という驚きがあって。それから海外ではちょこちょこ紙の雑誌でも掲載されるようになって。

――すべて海外での反応だったのですか。

濱田 日本で取り上げられるようになったのはつい最近です。最初は台湾版の『THE BIG ISSUE』から表紙にしたいと連絡がきたんです。台湾版はヴィジュアルもかっこ良くて、向こうでは若者が読む雑誌というイメージ。それに載ったことでデザイン系な人たちから話題になって、その機運を感じ取ったギャラリーの方からメールで「個展をやりませんか」とオファーがきたんです。

――えっ、いきなり個展ですか。

濱田 最初は、絶対に騙されてると思いましたよ(笑)。それが2011年くらいかな、すでにFacebookも流行り始めて、ネットで海外の人と普通に交流できるみたいな時代になってきたんです。

多いのは「自分の子ども時代を思い出す」という感想

――そこからフォトグラファーの道に進まれたのですか。

濱田 いや、まだまったく。そんな感じで海外での個展が1年で4回くらい続いたんです。でも、そんなつもりでやっていなかったから自分でも信じられなくて。ただ自分の子どもを撮っているだけで、仕事にできると思っていなかったですし、線を引いてましたね。でも、同時期にwebデザインの仕事がしんどくなってきて。もともと独学でやってきていたので、時代とともに、技術的についていけなくなってきて。それでデザインはもう無理かもなって思い始めたんですが、またどこかに勤めることはもう考えられなくて。それなら、みんながいいって言ってくれる写真をやろうかなと思ったんです。

――ここまでいい感じに流される人生ですね(笑)。でも、結婚して子どももいらっしゃるなかで、転業する怖さはなかったですか。

濱田 たぶん楽観的なんでしょうね。それにwebデザインの仕事に疲れてしまっていたちょうどそのタイミングで、自分の写真を評価してくれる人たちがいたので。

――海外の方たちからは、どんな反応があったのですか。

濱田 昔から多いのは「自分の子ども時代を思い出す」という感想ですね。「自分のことを考えさせてくれた」みたいなこともよく言われます。誰にでも子ども時代があって、全員が通ってきた道ですから。そこで、子どもがよくやる仕草とか原体験みたいなものを切り取って、積み重ねていくと、僕の子どもを見ているという感覚よりも、自分を見ているような感覚になるんだなって。そこに気づいたとき、もっと洗練させていこうと思ったんです。

――濱田さんも、ファインダーを通して昔の自分を見ている感じがするのですか。

濱田 ありますね。ある時、僕の実家の玄関に子どもがちょこんと座っているのを見て、「自分もあんなふうに座っていたな」ってヘンな気分になったんです。まるで自分がもう一度生き直している風景を、さらにファインダーで覗いているような不思議な感覚。

――それが、海外の人たちから「自分の子ども時代を思い出した」という感覚とリンクするんでしょうね。

濱田 僕は彼らの親なので、かわいさとか愛がヘンに絡まないようにしています。感情も含め、離れるだけ離れたい。そうでないと、いろんな意味で近づいてしまって、他人が入り込む隙間がなくなってくる。たとえば、他人の子どもの写真付き年賀状をもらうのが苦手という人もいますよね。僕の場合、それを写真集にまでして、100枚くらい連続で見てもらうことになるわけですから、『もういいよ』と思われずに共感してもらうにはどうしたらいいかをいつも考えています。

photo

毎日一緒にいるからこそ離れられるんです

――そうさせないための大事なポイントはどこですか。

濱田 親としてというより、単純に僕が「子どもってこんなことするんだ!」って面白いと思ったら撮る。「これとこれを組み合わせて遊ぶんだ!」とか、そういうところに感動する気持ちはみんな同じだと思う。あとは単純に距離を離す。やっぱり我が子だとかわいいから、「こっち見てピースして」とかになってしまう。それは家族の写真としてはよいのですが、他人が見たときにどうなんだろうって。僕の子どもを見てくださいっていうんじゃなくて、その写真を通して、皆さんに自分のことを考えてもらいたい。いつかどこかで、見たことがある何か。そんな気持ちになったときに、自分のなかにようやくストンと、落ちてくるんじゃないかと思っています。

――それは最初からですか。

濱田 いや、最初の1〜2年なんて全部顔のアップでした。でも、子どもが、どういう空間で、どういうシチュエーションで、どういうときに、そういうことををしているのかを表現するには、ある程度引いて撮らないといけない。すると、どんどん離れていって、最近は点みたいになっていますね。でも、毎日一緒にいるからこそ離れられるんです。逆に、他人の子は近づかないと撮れない。関係性があるからこそ離れないといけないし、関係性を築いてからでないとそういう写真は撮れないんです。

――なるほど。現在、Instagramのフォロワーが20万人を超えられていますが、いつくらいから始められたのですか。

濱田 2010年なので、わりと早かったと思います。でも、最初の2年くらいは何も考えずにやっていました。

――当初から一眼レフなどで撮ってたものをアップしていたのですか?

濱田 最初はiPhoneだけで撮っていました。スマホが出て、Instagramが出てきたときに、デスクトップPCで写真を見る行為をみんなやめたんですよね。ゆっくりと写真を見るというより、移動中、手の平のなかで流れてくる美しい写真を見ることが自分でも面白くなって。それからFlickrがフェードアウトしていって、Instagramに移っていくようになったんです。でも、途中まではあまり考えずに、パパッと撮ったものをあげていました。それがあるとき、海外のユーザーがすごくキレイな写真をいっぱいあげていることを知って。「こんなことやってる場合じゃない!」って、「いまはたとえ小さい画面でもきれいに美しく見せるようになっているんだ!」って。そこからは何でもない日常の風景でもできるだけ美しく撮ってアップするように心がけているのですが、そういう海外の流れを取り入れるのが少しだけ人より早かったんだと思います。2012年の終わりくらいかな、Instagramをやっている人もいまほど多くなくて、みんな最近のようには上手に使っていなかったし、写真に対する意識も高くなかったと思います。だから当時は、なんでそんな面倒なことをするのって思われていましたね。

――その意識の変化は、作品発表の場だと思うようになったということですか。

濱田 海外ではそれが当たり前になっていた衝撃と、あと、もうひとつきっかけになったのは、ある大御所の写真家の方が携帯で撮った写真をネットにアップされていて、お仕事の写真はめちゃくちゃ綺麗でかっこいいのに、それが画質もよくない適当なスナップだったのを見て、なんだか残念に思ったのも大きかったです。

――あぁ、なるほど。それはわかります。

濱田 僕はその頃フォトグラファーに転向したばかりでしたし、出自がインターネットだったので、少なくとも自分がそう思われてしまうのは本意ではないなと。もちろん大御所の方たちはすでにリアルの世界でキャリアがあって、そこに力を入れる必要もなかったと思うんです。でも、最近はその方々もInstagramでも本気を出されていて。

いまは写真が好きだし、写真をやりたい

――現在もお子さんを撮らていますが、趣味でやっていた当時と何か変化はありますか?

濱田 子どもの写真だけは仕事だと思いたくないし、そこだけは守らないといけないなと思っていますね。相変わらず、そのへんで面白いことをしているから撮っているだけ。ただ、テクニック的には腕が上がってきているので洗練されてきたとは思いますけど。子どもが大きくなるにつれ、親子の距離感が変わってきたのは写真からもわかりますね。

――いまおいくつですか?

濱田 10歳と8歳です。

――これから徐々に変わりますね。

濱田 それは仕方ないですね、自分もそうだったから。「いつかこんなことできなくなるんだろうな」みたいな、ちょっと切ない気持ちを抱きながら撮ってるからそういう写真になるんだと思います。

――最近はどんな仕事のオファーが多いですか。

濱田 「自由に撮ってください」って言われることが多いです。とってもありがたいのですが、反面、課題でもあって。以前よりも、雰囲気が良ければきっちりきまった写真でなくても受け入れられる時代になったと思うんです。そのタイミングに、自分が子どもをつくり込まずに撮ってきたようなやり方がマッチした。そこを研ぎ澄ませてやっていたら、自分のパブリックなカラーができた。もちろん、お仕事をお受けしたら100%とはいわず120%にして返したいと思っています。でも、この状況が来年も続くかといったら疑問です。それは世の中的にも、自分のモチベーションとしても。そこがいまの僕の課題です。

――これまでの流れを考えると、写真以外の興味が生まれたらそれはそれなのかなって感じもしますよね。

濱田 ほんとそうです。そもそも写真家になりたいと思ったことは一度もなかったんです。周りの方々に自分の能力を教えてもらったんです。でも、いまは写真が好きだし、写真をやりたい。

photo

インスタグラマーと言われるのには抵抗がある

――最近は、何か気になる新しいサービスはありますか。

濱田 いまはまだないですね。でも、みんながやり始めているので違うことやりたい気持ちはあります。Twitter、Facebook、Instagramは定番になっているので、そんなに簡単には消えないと思います。ただ、インスタグラマーと言われるのには抵抗があります。僕はInstagramを使ってお仕事をしているわけではないので。

――とはいえ、Instagramのフォロワーを増やしたい人向けの講演会に呼ばれることもありますよね。そういうときは、どんなお話をされるのですか。

濱田 もちろん世の中にはフォロワーを増やすためのテクニックもありますが、僕がやっていることは、自分がキレイだと思う写真を淡々とアップしているだけです。ですから、ハッシュタグや相互フォローのようなInstagramの上手な使い方の話をするのは僕の役目ではないと思っています。有名人でもない限り、いい写真をアップする以外にその近道はないと思うんですよね。

――今後やってみたい、撮ってみたいものは何かありますか。

濱田 ファッションと、あとはもっと広告をやってみたいですね。

――お子さんの写真は何歳になっても撮っていきたいですか。

濱田 いいなと思ったら撮るでしょうね。その気持ちは続くんじゃないかな。

――さまざまなお話を伺えて、とても面白かったです。今日はありがとうございました。

photo

濱田英明 Hideaki Hamada

写真家。1977年、兵庫県淡路島生まれ。大阪在住。2012年9月、35歳でデザイナーからフリーのフォトグラファーに転身。2012年12月、写真集『Haru and Mina』を台湾で出版。『KINFOLK』(アメリカ)、『FRAME』(オランダ)や『THE BIG ISSUE TAIWAN』(台湾)などの海外雑誌ほか、国内でも雑誌、広告など幅広く活動中。2014年10月、日本で写真集「ハルとミナ」(Libro Arte刊)を出版。
http://hideakihamada.com/
https://www.instagram.com/hamadahideaki/

RECOMMEND STYLE

この記事を読んだあなたにオススメのスタイル

PAGE TOP