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音SHIPS-注目アーティストの友だち巡り・渋谷慶一郎編-

音SHIPS-注目アーティストの友だち巡り・渋谷慶一郎編-

いま巷を賑わせているトラックメーカーを数珠つなぎにしていく人気企画の第6弾! 今回は、DE DE MOUSE(デ デ マウス)さんからのご紹介で、渋谷慶一郎さんが登場。電子音楽から、映画やドラマのサウンドトラック、初音ミクを主演に起用した世界初のボーカロイド・オペラなど、常に挑戦的な活動をしている渋谷さん。音楽からファッションについてまで、さまざまなお話を伺いました。

中2で僕は進路を決めたんです

――今回は、DE DE MOUSEさんからのご紹介ということで。一見、接点がなさそうで意外だったんですけど、ふたりはいつ頃からお知り合いなんですか。

渋谷  僕がクラブでライブとかDJをするとき、同じイベントに出たりしてたのかな。彼は最初、僕を怖がっていた感じがしたけど(笑)会えば、どうもみたいな感じで。でも、ちょっと前に滋賀のキャンプ場で野外フェスがあって。DE DEくん、七尾旅人くん、僕がトリみたいな順番で、七尾旅人くんのときに暴風雨になって、橋が壊れそうだから避難してくれみたいになっちゃって。結局、ライブをせずに帰ることになったんです。そのときに雨が止むのを待ちながら暇だったからテントで喋ってたんですよ。で、爽やかな人なのかと思ってたら、女性関係の話とか思った以上に面白くて(笑)。盛りあがったんですよね。

――DE DE MOUSEさんの音楽にはどんな印象を持っていますか。

渋谷  キャッチーで自分のスタイルがあるなって思いますね。あと、音が細かいから、ヘッドホンをよく使って作っているなって印象。

――渋谷さんは何で聴きながら作るのですか。

渋谷  僕はヘッドホンが嫌いで。耳が悪くなるのが恐いんですよね。だから、いつもスピーカーです。

――やはりその違いは音に表れるものですか。

渋谷  うん、変わるんじゃないですかね。

――渋谷さんが音楽を始めたキッカケは、お母さまがバイオリニストで、幼稚園くらいからピアノの教室に通われていたと聞いていますが。

渋谷  それは英才教育でもなんでもなくて、ただ僕がすごく歌が下手だったから、親が街の音楽教室みたいなところに連れて行ったんですよ。そこにたまたま綺麗な先生がいて。それがピアノの先生だったから、そのまま続いたって感じですね。

――その理由は面白いですね。とはいえ、小さいときにピアノを習う人は多いですけど、だいたいいつの間にかフェードアウトするじゃないですか。

渋谷  うん、だから先生が美人だったからですよ(笑)。本当に綺麗だったんです。女優とかになれたんじゃないかってくらい。

――続けられた理由は本当にそこだったんですね(笑)

渋谷  これは最近取材でよく話すことなんだけど、あるとき父親が病気になったんですよ。それで「俺は癌でもうすぐ死ぬから、やりたい仕事を決めろ」って言われて。そのときに本屋を回って、何か面白そうな仕事ないかなって。いろいろ調べたら、音楽を作る仕事だなって。

――それがいつ頃ですか。

渋谷  中学2年くらいですね。

――えっ、その時点で決めたんですか。

渋谷  そう、中2で僕は進路を決めたんです。

――その後、お父さまは。

渋谷  高校を出てすぐに亡くなりました。

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僕はピアニストではないから、巧い下手ではなくてある種の芸というか、
時間と空間をピアノを使って持たせられるかが重要

――その間、ピアノはずっと綺麗な先生に習ってたんですか。

渋谷  綺麗な先生だけだと芸大を受けるには厳しかったので、もう少しプロフェッショナルな先生について。でも、その先生は「あなたのピアノの弾き方はすごく変だけど、それは面白いから直さなくても芸大くらいは行けるし、いつか役立ちそうだからそのままでいい」って言ってくれたんですよね。

――そのヘンな弾き方っていうのは、どんなことなんですか。

渋谷  今でもそうなんですけど、人の曲でも全部自分の曲みたいに弾いちゃうんですよね。盗人猛々しいというか(笑)。ブラームスでもエリック・サティでも、自分が作った曲みたいに弾くクセがあるんです。

――先生にヘンな弾き方って言われたときはショックでしたか。

渋谷  グレン・グールドとかすごい好きで。彼は自分でピアノの椅子の脚を切ったりとかしてて。僕も真似して椅子をすごく低くして、猫背で弾いたりとかしてたから。その他にも好きなピアニストが何人かいて、彼らの真似がぐちゃぐちゃに混ざった状態で弾いてたから、それは確かにヘンだろうなとは思ってましたね。

――実際、それが今生きていたりしますか。

渋谷  僕はピアニストではないから、テクニックをひけらかすようなことはしなくて、ある種の芸というか、時間と空間をピアノを使って作れるのが重要だから、面白いほうがいいと思うんですよね。借り物みたいな状態で弾いていると、見ていても聴いていてもつまらないだろうし。個性を尊重することだけが常に大事だとは思わないけど、今は良かったと思うかな。

――リスナーとしてはどういう音楽を聴いてきたんですか。

渋谷  その時々で違いますけど、僕は結構いろいろ聴いていますよ。クラシックはずっと聴いてるし、現代音楽とか実験音楽も聴いていたし。でも、それだけだとクラスの仲間に入れないじゃないですか。

――現代音楽はいつくらいから聴いていたんですか。

渋谷  中学くらいから。そうそう、だから普通の人みたいなことをやってみようとして、ラジカセを持って西郷山公園に行って、サザンオールスターズを聴きながら昼寝してみたんですよ。そうしたら子どもが近づいてきて、「僕のお父さんサザンだよ」とか言うから何かと思ったら、ドラムの松田さんの息子さんだったという(笑)。

――アハハハ、面白いけどよくわかんないエピソードですね。

渋谷  そう、よくわかんないエピソード(笑)。そんな感じで、サザンオールスターズとか当時のJ-POPを聴いたりしてみました。

風景が浮かんだことは一度もないですね、音がそのまま浮かんでくる

――これまでに音楽が嫌いになったことはないんですか。

渋谷  そう言われてみると、ないかもしれないですね。バカンスとか行っても、3日くらい経つとストレスになって、早く音楽を作りたいから帰りたくなるし。

――そう考えると、きっかけは歌がヘタだったことでしたが、すごく向いていたってことですね。

渋谷  そうかもしれないですね。仕事で文章を書くとかってあるじゃないですか、このインタビューの校正とか(笑)。そういうときって仕事なのにすごい時間を無駄にしている感じがしちゃうんですよね。でも、音楽を作っているときは、すごく迂回して遠回りしても楽しいし時間が無駄だとは思わないかな。

――この連載で皆さんに聞いている質問なんですけど、渋谷さんは音を作るときにどうやって作っているんですか。浮かんだ風景を表現したり、メロディを理論的に構築したりとかいろいろあると思うんですが。

渋谷  風景が浮かんだことは一度もないですね、音がそのまま浮かんでくる。

――それはメロディなんですか、音なんですか。

渋谷  う~ん、両方ですね。メロディが鳴っているときは後ろでコードみたいのも鳴ってるんだけど、音の塊みたいなときもあるし。プールでずっと泳いでるときに、曲のアタマから最後まで全部思いついたり。家に帰ってピアノで確かめると、それだけで一曲できてたりするんです。

――それはすごい、ちなみに最初に作曲をしたのはいつですか。

渋谷  6歳くらいからチョロチョロやってましたね。でも、絶対に誰にも聴かせないようにしてましたけど。

――それは恥ずかしくて?

渋谷  そう、恥ずかしくて。

「ステージのために音楽を作るぜ」ってタイプではないんです

――そこから、聴いて欲しいなって思うようになったのはいつくらいですか。

渋谷  実は聴いて欲しいとは今でもそんなに思っていないんですよ。自分が楽しいから作ってるんだけど、それだけじゃ成立しないから発表してるだけで。僕はメディアにも出てるし、トークもしたりするから意外に思われるんだけど、コンサートは未だに恥ずかしい。それよりもスタジオで曲を作っているほうが好きですね。

――へぇ~。その恥ずかしいっていうのは、どういう種類のものなんですか。

渋谷  コンサートは自分の意思ですべてをコントロールできるわけではなくて、何かに引っ張られちゃうときがあるから。あとで聴くと、恥ずかしくて死にそうになりますね。

――ひとりで磨き上げて、納得したものを見せたいって感じなんですね。

渋谷  そう、だからスタジオで作っていたらいつの間にか朝になっていて、お茶でも飲んでるときが一番幸せ。「ステージのために音楽を作るぜ」ってタイプではないんです。

――そこは意外でした、ライブ感が楽しいわけではないんですね。

渋谷  毎回、PA(音や音響の調整)がストレスなんですよ。当たり前の話なんだけど、自分がピアノを弾いているときって、サウンドチェックができないじゃないですか。どう聴こえているのかわからなくて、どうにかしてわかろうと、PAのアシスタントさんに弾いてもらったりもするんだけど。それじゃやっぱり意味なくて。それで、一度PA無しでやってみようと思って、9月に100人がキャパのピアノ専用みたいなホールでやったんです。

――はい。

渋谷  PA無し、MC無し、アンコール無し、休憩まで拍手も無しっていう、極限までミニマムなスタイルのコンサートをやってみたんです。自分の曲からクラシックから即興まで、その場でマッシュアップして45分くらい弾きまくって、休憩してからまた45分弾きまくる。それがすごく評判良かったんですよね。確かにいまは音楽配信もあるし、音楽がBGM感覚ですごくユースフルになっているから、逆にそういう重いものが求められているのかもしれないなとも思う。僕もある種のトランス状態で弾いてるし、軽いものの対極にある、儀式的なものが面白いなって思ったので「Playing Piano with No Speakers」というシリーズにして今年の12月に福岡と滋賀と東京でやることになっています。

――今はそれが一番楽しいことなんですね。

渋谷  ピアノソロのコンサートのやり方を見つけた感じはします。でも、人数が増やせないから、経済効率が悪いのが悩みなんですけど(笑)。音楽的には楽しいですね。

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買っても買わなくても、洋服を見に行くのは好きですね

――渋谷で生まれ育ったということですけど、どんな学生時代でしたか。

渋谷  通学路がラブホテル街でしたから。制服がブレザーでスーツみたいに見えるから、中3で×××行って××飲んだり、×××で×××したりしてましたよ、人生の予習として。

――都会っ子はませてますね(笑)。洋服はいつくらいから自分で選ぶようになったんですか。

渋谷  中学くらいから興味を持つようになりましたね。高校は私服だったので、小遣いとかバイトしながらちょこちょこ買ってました。ハリウッドランチマーケットとかよく行ってたかな、あとはハイスタンダードとか。

――ファッション誌も読んだりしてましたか。

渋谷  高校の頃は読んでましたよ。ただ、それよりも近くで実物が見れましたからね。いまもそうなんだけど、自分が何を着るか、何が似合うかとかはあんまり興味無くて、新しいものに興味あるんですよ。ファッションがいいのは、手っ取り早く年に2回新しくなるじゃないですか。それを気軽に見たり買ったりできるのがいいですね。

――どこらへんで見に行くんですか。

渋谷  最近わかったのは、僕は近所でしか物を買わないってことで(笑)。いまは日本の事務所が代官山だから、恵比寿にあるワイルドライフテーラーとか、中目黒の1LDKとか、その向かいの店とか。代官山だとOKURAの着物とか作務衣とかモチーフにしたものは外人もすごく好きなのがよくわかる、オリジナルだから。いわゆるすごく東京っぽいファッションが、東京にいるときは気に入っていて。今日着ているのも全部東京のデザイナーです。あとは代々木上原のJOHNっていう店はめちゃくちゃセンス良くて好きです。セレクトは多くないんだけど、東京の若いデザイナーのものを中心にイギリスものちょっととビンテージものがあって、そこはよく買ってます。

――洋服を定期的に見に行くのは中学くらいからの習慣なんですね。

渋谷  そう、習慣になってる。アートみたいに高くないから買えるじゃないですか。しかも僕はスタイリストをつけないから、撮影と私服が変わらない。だからある程度買っても問題ないだろうというエクスキューズをしつつ、結構買ってますね(笑)。

東京のファッションはパリには合わない

――今はパリに住まわれてますけど、東京のファッションはどうですか。

渋谷  東京のファッションはすごく異質というか小綺麗というか、少なくともパリには合わないですね。ロールアップのデニムとかパリだとなんか違和感ありますね(笑)。ただ、それは日本が遅れてるとかそういう話じゃなくて、ファッションは民族衣装に近づいている気がするんですね。地域性がすごく出ている。それとはまた違うハイブランドっていうレイヤーがありますけど。そういうのは、日本は風景的・風俗的に普段着として着れる環境だと思うけど、パリとかベルリンなんてモードの服を日常的に着る人なんてファッション業界の人くらいで、みんなもっと汚いカッコしてますね。

――パリではどこに行くのですか。

渋谷  家の近くにあるピガールはよく買ってますね。あと、ル・コントロワール・ジェネラルってアフリカ人がやっているクラブというかラウンジがあって、そこの2Fで古着を売っているんですよ。アフリカの古着とかデザイナーものがあって、カッコイイです。あとは、近所で売ってるトレーナーとかTシャツとか適当に買ったり。東京とはまったく装いが違うんです。

――土地によって服装を変えるんですね。

渋谷  向こうで着たいものと、こっちで着たいものが違うから。

――その方がしっくりくるってことですか。

渋谷  それはすごくあります。パリだと、イビザで買った力士の刺繍が入ってて、「東京」とか書いてある訳のわからないお土産品みたいなスカジャンとかしっくりくるわけです(笑)。東京よりは全然エスニックだから。でも、それを東京で着てたらバカでしょ? でも、東京のブランドはよくなってきている気がしますね。アンユースドとかコモリとかエンダースキーマとか、すごく洗練されているし考えられてるし価格も抑えられてる。

――フィーリング的にどっちのほうがラクとかありますか?

渋谷  人間関係はパリのほうがラクです、シリアスじゃないし。英語で話してるからかな、お互い母国語じゃないとネガティブな話にならないんですよ。でも、浅い話をしているわけではなくて、思考がシンプルになるというか。あと、日本だと会議とかで遠慮なく疲れてる人いるじゃない? あんな人いないから気分いいです(笑)。

――朝とか特に、日本人ってめちゃダークですよね。

渋谷  人を不愉快にさせることに対して、躊躇がないっていうか。フランス人は、よく知らない人を不愉快にさせてはいけないってことに関しては徹底していて。サヴァ、サヴァって言ってるのも、40%くらいは「楽しいってテンションだよね? だったらお互い嫌な思いしないようにしましょうね」っていう確認だと思うんですよね。あと、デフォルトが笑顔だし。日本人はデフォルトが苦痛で歪んでる人とかいるじゃないですか。寝たら? みたいな。

――今後、住んでみたい国とかありますか?

渋谷  ベルリンはすごい好きですね。あとはアムステルダムも。あとロシアは大好きです。先祖はロシア人なんじゃないかと思うくらい落ち着きます。

――今日はいろいろと面白い話をありがとうございます。次回のゲストが誰になるか、楽しみにしていますね。

渋谷  う~ん、誰にしようかな。ちょっと考えておきますね。

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渋谷慶一郎 Keiichiro Shibuya

音楽家。1973年生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。
2002年に音楽レーベルATAKを設立。国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。
代表作に『ATAK000+』、『ATAK010 filmachine phonics』 など。2009年、初のピアノソロ・アルバム『ATAK015 for maria』を発表。
その後、映画やドラマ音楽など多岐に渡って活躍。2012年には、初音ミク主演による世界初の映像とコンピュータ音響による人間不在のボーカロイド・オペラ「THE END」を制作、発表。大きな話題に。
現在まで、多方面で挑戦的な活動を続けている。
http://atak.jp

コンサートスケジュール

11/25(水) COSMOGARDEN10 “Le Labyrinthe Intangible” @Theatre des Sablons (Paris)
http://paradiscosmique.com/

12/3(木) UN.a “Intersecting” リリースパーティ@六本木SuperDeluxe
https://www.super-deluxe.com/room/4026/

12/4(金) THINK_59 渋谷慶一郎@SUPPOSE DESIGN OFFICE(広島)
http://atak.jp/ja/news/2015-12-04

12/6(日) 石黒浩×渋谷慶一郎×池上高志 トーク/渋谷慶一郎×コウカロイド ライブ・デモンストレーション@熊本市現代美術館
http://www.camk.or.jp/event/exhibition/stance/

12/8(火) ピアノソロコンサート “Playing Piano with No Speakers” 寝待月のショー冬の章@STIMMER SAAL(滋賀)
http://nemachizukinoshow.com/

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