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現代アートの異端児 加賀美健の頭の中

SHIPS JET BLUE

現代アーティストとして世界で活躍する加賀美さん。今季、SHIPS JET BLUEでは氏がデザインしたウエアやグッズをラインナップしています。しかし、そもそも加賀美健とは何者なのか!? それをまだ知らない人もいるかもしれません。百聞は一見に如かず。まずは氏のサイトを見てください。

http://www.kenkagami.com/

さて、これらの作品を見ていただいて、みなさんはどのように受け止めましたか?それぞれ感じることはあるはず。そこからこのインタビューは、はじまります。さて、加賀美健の頭の中は、いったいどうなっているのやら…。

——まずは月並みですが、加賀美さんが現代アートの世界に入るようになったきっかけからお教えいただけますか?

実は昔スタイリストのアシスタントを6年くらいしていました。

——入り口はファッションだったんですね。

文化服装学院のスタイリスト科に在学中にアシスタントに。当時はまだスタイリストという仕事が今ほどメジャーじゃなくて、特に男でスタイリストを目指すっていうのが本当に少なかった時代だったと思います。1クラス70人くらい中5人しか男はいなかったかな。

——6年間もアシスタントをしていたら、スタイリストとして十分独立できるキャリアですよね。そこから一体なぜ、どうやってアートの世界に?

………。

——笑。

お金を貯めてアシスタントを卒業後にサンフランシスコに行きました。ただサンフランシスコが好きだったのであまり深く考えずに、とりあえず行きました。結局、現地にいる間は学校なんてほとんど行かずに、スリフトストアや古着屋を毎日のようにまわって、ガラクタで何か作ってみたり、絵を書いていたりしました。考えてみればそこが自分のスタート地点だったのかもしれませんね。

——スタイリストのアシスタントの頃から、そういうアート性のようなものは自分の中にあったんですか?

いや全然(笑)。当時からノートにアイデアみたいなものは書きとめたりしていましたけどね。ただ書きとめていたっていう感じで。

——根からのアーティスト…と言うと大袈裟に聞こえますが、そういうのが純粋に“好きだった”っていうか。

そうですね。たとえば東急ハンズがやっている「ハンズ大賞」とかあったでしょ。あれにも応募したいとか親父に言っていたりね。全然上手くはないんだけど、図工が好きだったんですよね。小学校や中学校で図工で評価される人って上手い人だったのでそういうのを見て「なんだよ」って思っていましたね。確かに上手いけど、全然おもしろくないなって思ってました。

——小さいころからアート的な感性を持っていたんですかね。家庭環境がそうだったとか?

全然そうじゃないですね。本当に普通の家です。芸術家によくある「小さい頃から絵ばっかり書いていた」とか「夢中になって何か作っていた」とかそういうエピソードは全然ないです。なんていうか、単純にいたずらっこだったっていうことなのかもしれません。人と違うことをしたがるバカなことばっかり思いつくガキっていうか。いたずらで歩道橋の上から犬のうんこを投げていたりしましたから(笑)それを大人になってそのまんま続けていたら、いやもう投げたりはしませんが(笑)、それがアートになったって言うことなのかな。だって40歳過ぎたオヤジが相変わらず「うんこ」とか書き続けていたら、ちょっと変わったヤツでしょ。そういう“いたずら”をアートにしたっていうところがおもしろいのかなって。

——じゃあサンフランシスコの経験を経て、アーティストということを意識しだした?

どうなんだろう…。でもそこで決まったようなものかな。

——加賀美さんの代表作といえば「ミルクマン」ですが、それはどうやって生まれたんですか?

最初顔を描いたんですよ。でもやっぱり身体もあったらおもしろいかなと思い描いてみたんです。そしたら目の前に朝食で食べようと思っていたバナナがあって、それを刺してみました。

——でもそれがアメリカのバンド「ディアフーフ」のアルバムジャケットにも使われているじゃないですか。

それが大きかったですよね。そこから自分を知ってくれる人も増えたと思います。

——…結構“たまたま”なんですね。

たまたまですよ、人生ほとんど(笑)。だけど多分無意識的にいつも何かを探しているんでしょうね。別に作品のことを四六時中考えていないし、インスピレーションを探しに、とかそんな大袈裟なことじゃなくて、本当に単純に自分がおもしろいなって思えるものに意識が引っかかる。そういう意味でも子供と同じです。まずは、自分がおもしろいかどうか、が尺度。他人が見てどうとかは二の次かなあ。自分がおもしろければもう大丈夫ってどこかで思っているので。

——今回SHIPS JET BLUEでは加賀美さんのTシャツもラインナップしています。加賀美さんの作品はファッションとの親和性が高いと思うのですが、それは作品にポップさがあるからなのかなと思います。それはどこかで意識しているんですか?

そうですね。ポップなものは好きですね。作品にはちょっとえぐいものもあるけど、決してダークじゃないというか。性的なものをモチーフにしている作家はたくさんいますが、僕の場合はそれが“幼児性”に近いんですよね。重くない。だけどよく見るとちょっとシニカルだったりする。その辺のバランスを大事にしているつもりです。メッセージ性とか哲学とかは込めていません。意味がないものが好きなんですね。だけど、見る人によって意味がある。

——それこそ、子供がふざけてやることの延長というか。加賀美さんの作品はそんな自由さがある。分別がついてくると大人はなにかと制限がかかってくる。無意識的に。まわりの目も気になってくる。でも、そういった枠を飛び越えているところが魅力なのかなと。

思いつくこともやってることも子供の時から変わってないですからね。うんこの絵をかいたり、立体物つくったり。むかし教室で先生の目を盗んでやっていたことを何十年後もやっていて、それをアートのコレクターが買っていく。それってすごくおもしろいですよね。ただ成長して頭の中がアートになっただけで、やっていることは変わらないのに。

——でもそれが落書きからアートに変わる境目って言うのはきっとあるじゃないですか。

それをわざわざ発表するっていうのがひとつ。あとは続けることじゃないですかね。ぼくも十何年やっていますが、最初は「まだコイツこんなことやってんだ」という感じだと思うんです。でもそれをずっとずっと続けて、しかも海外で発表したりして。そういうのを積み重ねていくにつれて、定着していくっていうか。ずっとやり続けているのっておもしろいじゃないですか。

——継続性がアートになる。

それと僕ニュース好きなんですよ。今、世界で何が起こっているのかっていうことにすごく興味がある。ネットでそういうのばっかり見ています。テレビや雑誌はある程度脚色が入るので、ネットの方がリアルですね。もちろんそれをダイレクトに作品に落とし込もうという気持ちはまったくない。ただ好きなだけなんですが。もしかしたらそういうことも作品に影響を与えているのかもしれない。

——自由さ、無邪気さ、無頓着さ。そこに隠れる無意識的なメッセージ。そこに見る人が引かれるのかもしれませんね。美術を専門的に学んでいないというのも加賀美さんの特徴ですよね。

確かに、現代アートをやっていて美大に行っていない人ってほとんどいないですよね。個人的には美大に行かなくてもアートは学べると思います。逆に美術の教育を受けるということが制約を受けているというか、、水彩画を描く時の水の量のコツとか、手の角度とか、そういうことを学ぶのは分かりますけどね。もっと自由に、好きにやった方が絶対におもしろい。…でも「好きなように」って言うと作れない人が多いんですよ。実は母校で非常勤講師をしているんですが、例えばシャネルの偽物を作るという課題を出したりしても自由に発想するということが難しいようで、僕がサンプルを見せると、今度はそれにとらわれてしまう。自由を許すと自由になれず、抑圧されると自由が欲しくなる。本当に自由になることって、実はすごく難しいのかもしれませんね。

——性的なものがメインモチーフになっている理由は?

単純に好きだってことです。といっても本物はだめ。あくまでもフェイクが好き。おもちゃっぽいものが好きなんです。大人になると性的なものにリアリティが増して、そういう(あからさまにそれを表現する)ことに蓋がされていく。そこに興味がありますね。性的なものって衣食住といっしょで常につきまとうものでしょ。そういう意味じゃとてもマジメなものをアイテムとして使っているつもりなんです。だけど子供からみればどうしようもないもの。そのギャップがおもしろいんです。

——今回のアイテムのデザインについて、いくつかモチーフを教えていただけませんか?

Tシャツ/各¥6000 (+TAX) “C”

トートバッグ/各¥5000 (+TAX) “C”

マグカップ/各1500 (+TAX) STUDY SHIPS

実家帰れ
僕は小中学校で野球をやってたんですが、すごく上手い先輩がいて、僕らがエラーすると「実家帰れ」って言うのが口癖で(笑!)。そこからです。
グラフィティっていったらみんな英語なので日本語で書いたら面白いかなと思って作ってみました。

FUKAZUME
中指立てているモチーフだと恥ずかしくて着れないので深爪(笑)。

加賀美健 Ken Kagami
Your used toilet paper roll no.2
2014
Bronze
dimension variable,10.3×3.2cm
Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN

——最後に、現在の活動や今後の展望などを教えてください!

少し前の個展では、ブロンズを用いた作品を発表しました。ブロンズといえば人物モチーフや抽象的なものが題材になることが多いですが、「はなくそ」「綿棒」「ブラジャー」「画鋲」「トイレットペーパーの芯」などの作品を発表しました。普通は絶対に作らないもを意識しました。今まではおもちゃやガラクタを使ってアートに昇華させていたけど、今回は逆説でアートの素材を使って真逆なものを作った。

——それは自分の中の進化?

そうですね。

——今後の目標はいかがですか?

とてつもなく大きいものを作ってみたいですね。例えば舞台のセットとか? あとは公園の遊具やホテルの部屋とか、そういうのもおもしろそうですね。これからも型にとらわれず色々なことをやってみたいです。

加賀美 健


1974年 東京生まれ。現代美術アーティスト。国内外を問わず多くの美術展に参加。ドローイング、彫刻などニューメディアを使った作品を多く手がけている。主な展覧会「加賀美健 Bronze works 2013 - 2014」 (2014年 MISAKO & ROSEN、東京)、「スコット・リーダー 加賀美健 The Future is Stupid」(2013年 ザ・グリーン・ギャラリー、ミルウォーキー)「アートがあれば2」(2013年東京オペラシティーアートギャラリー、東京)
自身が手がけるセレクトショップ「ストレンジ・ストア」にてTシャツなどのオリジナルアイテムを発表。またアパレルブランドとのコラボレーションも多数。YAECAのTシャツのグラフィックを手がけていることでも知られている。

アーティストページ:http://kenkagami.com/
問い合わせ:MISAKO & ROSEN http: misakoandrosen.com 03-6276-1452

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