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SHIPSと人 ~編集ディレクター 右近亨さん~

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ファッション誌を中心にこれまで数多くの雑誌編集に携わり、また放送作家としても活動されてきた右近亨さん。メディアやマスコミと呼ばれるなかで仕事をしてきた右近さんが、現在の状況をどう考えているのか。創刊以来、編集ディレクターとして関わられている、雑誌『HUGE』のお話しをもとに“今”という時代を語って貰った。




―さまざまなメディアが乱立するなかで、再びラジオが面白くなってきたりと、状況はたえず複雑に変化している気がします。右近さんはいまのメディアの状況をどう捉えていますか?

右近 ここ5~6年の間にwebメディアが台頭して、雑誌的なものがやせ細っているようには感じますね。かつては新聞、テレビ、ラジオ、雑誌の4つがマスコミだったわけです。その頃は、文字通りマス(大衆)コミュニケーションでした。しかし、もはやその4つはマスとはくくれない状況になっていて。テレビだって視聴率が40%前後なものってオリンピックやサッカーのワールドカップ予選、紅白歌合戦くらい。もはやテレビもマスコミではないんです。先ほど、ラジオがまたおもしろくなっていると仰りましたが、マスコミとしてのラジオが面白いのではなく、限られた人に向けた放送が話題を集めている状況ですよね。そうやってどのジャンルも生き残っている。ファッション誌にしても、40万部を超えるようなカタログ雑誌は一冊あれば十分な時代だと思うんです。

―情報を発信する場所が増え、人々のスタイルが細分化するなかで、雑誌としての『HUGE』はどこへ向かうべきだと思っていますか?

右近 『HUGE』の競合誌はZINE(インディペンデントなアートブック)やwebマガジンだと思っています。もはやファッションやカルチャー雑誌というジャンルは、ミニコミや専門誌みたいなものだと思うんですよ。これまでのファッション誌って、どれもバイヤーズガイドのようなもので、モデルは個性がなくてもいい、その代わりにモノがしっかり見えているべきというルールがありました。でも、それはマスコミ的な発想で、いまではwebにある情報でも事足りてしまうんです。そこではない、別のフィールドでお客さんを獲得したいという気持ちが『HUGE』にはあります。

―別のフィールドとは、具体的にどんな方がターゲットになるのでしょうか

右近 基本的に、自分たちの美意識にフィットするものであれば、お客さんはお金を出してくれると思っています。少し乱暴な言い方をすれば、『HUGE』は影響力のあるデザイナーやクライアント、またクリエイティブな仕事をしたいと思っている人に響いてくれればいい。その実験として、一度パリのコレットに置いてみてはどうかと思って、何冊か無料で送ってみたんですね。すると、コレットの売り場に値段が付いて並んだんですよ。そこからファッション関係者に広まって。それと同じようなことが、いま香港やN.Y.などにも広がっています。ですから、海外に取材に行って『HUGE』を見せると、若いデザイナーなんかも「あぁこれか、知ってるよ」と話がスムーズなんです。100号記念となる2月売り号では、ラリー・クラークの撮り下ろしを第一特集にしています。普通ラリー・クラークに仕事を頼むってことは大変なことですが、彼もまた『HUGE』を知ってくれていて快く引き受けてくれました。

2/24発売された記念すべき100号ではフォトグラファーであり映画監督のラリー・クラークを大特集。撮り下ろし写真から本人インタビューまで、充実の一冊に仕上がっている。

―パリのコレット以外では、どんな都市に送本しているんですか?

右近 意図して送っているのは、イギリス、オランダ、ベルリン、L.A.、N.Y.あたりですね。一方で、香港のとある地下鉄では毎号『HUGE』が日本の発売日に並ぶらしいんですよ(笑)。誰かが定期的に運んでいるんでしょうね。

―たとえ利益が出なくてもいいから、影響力のある場所に置いて、自分たちのセンスを認められたいという感覚はまさにZINE的ですね。グローバルで読まれるうえで意識していることはありますか?

右近 文字をなるべく書かないことですね。それだけに立ち読みで済まされるリスクもありますけど(笑)。僕も英語がわからずにずっと洋楽を聴いていましたし、中身がわからなくても洋雑誌を買っていますから。そういう感覚で読めると思います。英文を入れるという考えもありますが、そのインフラを整備することは難しいですね。例えば、HUGEをNYで売ろうとすると、定価750円の雑誌に、1500円以上の輸送費がかかるんです。なので、よほどの規模ではないと海外販売は厳しいんです。

―これまで日本の雑誌業界では、オシャレなものは売れない、商売にならないと言われてきましたよね。

右近 発行部数の競争でいえば、僕らなんて完全な負け組ですよ。でも、テーマを毎号変えても部数はそんなに変わらず安定しているんです。つまり、『HUGE』ファンというのがしっかりいてくれて、また影響力のある人たちが読んでくれているから広告もある程度は入る。具体的には言えませんが、パリコレに参加しているけれど、ワールドワイドなキャンペーンを展開していないメゾンなどで、HUGEのような雑誌しかハマるところがないクライアントも結構あるんです。

―『HUGE』の強みはどこにあると思いますか?

右近 僕らの競合がZINEでありwebマガジンであるとするならば、彼らに絶対できないことは何かを常に考えています。まず、webに関していえば“紙をめくること”ですよね。写真サイズにも制約があるので、webはストーリーが作りづらいメディアなんです。それならば、僕らはファッションストーリーに力を入れようと。そのためには、従来の洋服がしっかり見えなくてはいけない、モデルの個性があってはいけない、そんな縛りから解放されなくてはいけない。これまでの教科書はまったく意味がないんです。

―ファッションストーリーというのは、どのように作り上げていくのですか?

右近 まずはフォトグラファーやスタイリストたちスタッフと、映画やアートなどからアイデアの源を考えて、そこからファッションストーリーの主役となる人物像を考えます。そこから、彼はどう生きて、どんな生活を送っているのかと具体的にシーンとして落とし込んでいくんです。そこでは、光の感じや色、キャラクター性がとても重要で、細かい部分をみんなで何時間も話し合います。そのやり方っていうのは、SHIPSのカタログ作りと同じですね。

―右近さんは『月刊EXILE』のディレクターもされていますよね。

右近 『HUGE』とは、商品価値がまったく違うものですね。それこそ、マスコミというのが崩壊したからこそ生まれた新ジャンルなんです。人気グループがテレビ番組になったことはあったけど、月刊誌になることはなかった。それだけに、やりがいがありますよ。

―最後に、SHIPS MAGを右近さんはどう見られていますか?

右近 まず、コンテンツの多さに驚きました。しかも、これまで雑誌がやってきたようなことをSHIPSの方が自らやっていて、カメラマンやライターは雑誌でも活躍している人がサポートしている。個人的にはあまりwebマガジンは見ないですが、脅威ではありますね。でも、少ない部数であれば紙媒体はなくならないと思っています。アナログレコードみたいに残るんじゃないかな。

―今日はありがとうございました。

右近 亨

1958年北海道生まれ。学生時代から雑誌の編集アシスタントを初め、後にフリーランスのエディターとなる。
『POPEYE』など雑誌の編集を経て、1980年代末からテレビの放送作家業も兼務。2003年『HUGE』の創刊からディレクターとして『HUGE』に関わる。2011年4月からは『月刊EXILE』のディレクターにも就任。

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