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心意気を表明する、コミュニケーションチャームってなんだ?

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蛍光グリーンのプラスチックに描かれた、YES/NO、トイレ、病院、電話、電車、Excuse me/Thank youの各アイコン。プレートには編んだゴムひもやビーズのストラップも付けられていて、オシャレに装飾されている。実はこれ、街中で「困っていたら私に声をかけてください」「ハンディがある方をサポートしますよ」という意志表面のサインなのだ。何かあれば、アイコンに指をさすだけで意思疎通を図ることもできる。SHIPS 渋谷店、原宿店でも展開することになったこのコミュニケーションチャームについて、渋谷区議会議員の長谷部健さん、NPO法人ピープルデザイン研究所の須藤シンジさん、そしてスペシャルゲストとして要潤さんにご登場頂き、お話しを伺った。須藤さんは「Nextidevolution」というブランドで、障害を持った人や、そんな彼らをサポートする人たちが使いやすい実用的でオシャレなアイテムを企画販売している。


――まず、このコミュニケーションチャームはどのように生まれのですか?

長谷部 まず前段として、区議の僕がここにいる理由をお話ししますね。僕は原宿で生まれ育って、「そんな場所に住んでいるなんて、いいね」って若い頃からずっと言われてきたんです。その理由というのは、長い間ここが文化や流行の発信基地だったからで。ロカビリーや竹の子族、DCブランド、裏原宿ブランドなどの文化が生まれ、SHIPSさんのようなセレクトショップも生まれて、これまではこの街でしか買えないものがたくさんあったんです。最近は雑誌で取り上げられることも減ってきましたけど、渋谷・原宿びいきの僕からすると、いまや全国が渋谷化しているように思える。でも、やっぱり渋谷区はいつまでもかっこいい街でいて欲しい。そこで注目しているのが、ダイバーシティ(多様性)という考え方なんです。いろんな人が入り交ざった社会っていうのは魅力だし、海外で素敵だと思う都市は、そういう意味でどこも進んでいるんですね。それをうまく自分の仕事にできないかなというときに、須藤さんにお会いしたんです。

須藤 2年くらい前ですかね。


コミュニケーションチャーム ¥1,050/People Design Institute

長谷部 そのくらいですね。僕はグリーンバードという表参道のゴミ拾い活動もしているんですけど、そこで感じたのは「ゴミを捨てるなよ」というより、「ゴミを捨てるのってカッコ悪くない?」というアプローチのほうが響くということなんです。須藤さんが作っているアイテムも、直接的に「これは障害者のものです」という感じではなくて、「実はそういう人たちにも使いやすい商品なんです」っていう。そういう考え方や伝え方が、自分と近いなと思って、一緒にコミュニケーションチャームづくりを始めたんです。条例を作ることも大事ですけれど、まずは雰囲気づくりというか、ウェルカムな街に生きる人のマークになればいいかなと思っています。

須藤 僕がこういう仕事をするきっかけには、たまたま自分の息子が障害を持っていたということがありますね。そこで初めてマイノリティ側に身を置いたとき、健常者と障害者が分かれて生活していることを感じたんですね。その視点で街を見回してみると、障害者のみならず、LGBTと呼ばれるレズ、ゲイ、バイセクシャルなどのセクシャルマイノリティの人や、実数的にはマジョリティですが渋谷のイメージのなかではマイノリティの高齢者、お腹に子どもがいるお母さんも期間限定のハンディキャップですし、また、外国人観光客の方とか、意外にマイノリティは多いんです。そういう人たちを分けて考えるのではなくて、快適に混ざっていける価値観づくりができればいいなと思ったんです。なおかつ、長谷部さんがやっているゴミ拾いみたいに、柔らかいアプローチで進めていければなと思っていて。

長谷部 僕らはゴミ拾いのメンバーを集めるときに「朝の合コンです」って言っていますからね(笑)


須藤 メアドを聞きながらゴミを拾う、そのノリが本当にいいですよね。『Nextidevolution』の場合は、ファッションやデザインに力を入れて、「かっこいいね」とか「かわいいね」という言葉から始まるコミュニケーションを狙って10年やってきたんです。その流れのなかでコミュニケーションチャームに至ったのは、“赤ちゃんがいます”っていう妊婦さんが持っているチャームがあるじゃないですか。あれをヒントに生まれたんですよ。そして、もっとマイノリティの人も、映画やスポーツ観戦、ショッピングなど、どんどん街に出て来なよ! もし困ったことがあれば、誰かに聞けば大丈夫だよ、遠慮なく聞いてよ。もし、誰に聞いていいかわからない場合は、コレを持っている人に聞きなよ。そういう感じのものなんですね。逆に、そんな気持ちがある人にはみんなこれを持って欲しい。

――コミュニケーションチャームのようなものは、海外ですでにあったわけではなく、オリジナルの発想なんですか?

須藤 残念ながら、海外ではほぼあたり前のことなんですよね。なので、こういうものを持つ必要もない。ただ、長谷部さんもおっしゃっていたように、渋谷は昔からファッションや文化の発信地ですし、比較的に進んでいるほうだとは思うんです。

 最先端の場所ですよ。僕もずっと渋谷に憧れていましたし、高校生のときは香川から深夜バスで来ましたからね、スクランブル交差点を見に。

長谷部 やっぱりそうなんだ、あそこは僕も知らなかったんだけど、一日に人が渡る量が世界一の信号なんですよね。写真撮っている人が多いけど、最初は理由がわからなくて。

 あれが普通だと思っていたんですね(笑)

長谷部 そうそう、観光名所に見えてなかった。


須藤 そんな渋谷がこれから目指すべきは、上から目線ではない「思いやりの街づくり」だと思うんです。住民だけでなく、買い物に来たり、仕事に来たりする人たちとも一緒に新しい価値観を作っていければ最高ですよね。コミュニケーションチャームは、そういう仕掛けのひとつ。海外だと、地図を広げているだけで、頼んでもいないのに街行く人が声をかけてきますからね。行きたいレストランを言うと、「こっちのほうが美味いから」って違うところを案内してくれたり。そういうのを“シティプライド”というんです。

長谷部 “I♡NY”とか“Iamsterdam”とかもそうですよね。でも、実はみんなシティプライドは持っているんだよね、日本人はシャイなだなだけで。


――渋谷だけじゃなく、日本全国どこでもシティプライドはありますよね。ところで、僕らがこのコミュニケーションチャームを持って出かけるとき、何か用意しておくべきことや必要な知識ってありますか?

須藤  シティプライドの話にもつながるんだけど。端的にいうと、電車のなかで老人に席を譲ろうかどうしようか迷うときがあるじゃないですか。また、白い杖をついている人にも月1回くらい遭遇しますよね。でも、どうしようと思いながら、その瞬間が過ぎていく。そんなとき、一歩踏み込んで「どちらに行かれるんですか?」「ご案内しましょうか?」と声をかけてみましょうということなんです。地図を広げている観光客に声をかけるとかね。つまり、専門的な知識は特に必要ないんですよ。

 須藤さんと会って話をしていると、ハンディキャップを持った人たちに興味が生まれるんですよね。観察して見ると、「なるほど、こういうときに困るのか」というのがわかるようになるんです。意識しながら生活するだけでも変わりますよね。

須藤 そうなんですよ。すでにコミュニケーションチャームを持っている人に聞くと、これを付けるようになってから、妊婦さんや障害者の人が気になるようになったという声が多いんです。そうすると、おのずと手伝う場面が増えてくる。


――普通は、あまり意識せずに過ごしてしまいますよね。

須藤 実は、障害者手帳を持っている人は全国に730万人いて、人口の5~6%にあたるんです。それって、苗字が佐藤さん、鈴木さん、田中さん、高橋さんの人数を合わせたくらい。彼らが全員社会に出てきたとするならば、自分が知っているその苗字の人と同じくらいの割り合いで、障害を持った人を知っているはずなんですけど。

 僕はほとんどいないですね。

須藤 だよね、それだけ分かれて生活しているんですよ。実はあまり謳っていないんですけど、このコミュニケーションチャームは障害者の人たちが作っているんです。でも、普通は何か作ろうとなると“一生懸命作りました”というような、ハートフルバザーみたいなものになっちゃうんですよね。でも、これは渋谷に12か所ある障害者の作業所を、うちのスタッフが一年かけて回って、彼らが何をできるのかを調べたんです。その中には、紐を編むことがうまい人、穴に紐を通すことがうまい人などさまざまなんだけど。そんな彼らができることを考慮して、デザイナーにデザインをお願いしているんです。もちろんデザインの好き嫌いはあるだろうけど、かなりオシャレに仕上がっていると思うんですよね。コスト的には外国で作ったほうが安くなるんですけど、それでは意味がない。


 須藤さんとは3年くらい前に知り合って、それ以来仲良くさせて頂いているんですけど、普段はバカな話しかしていなくて(笑)。でも、たまにこういう話を聞くと、すごく興味深い活動をされていて。そんな関係で、『Nextidevolution』では、僕もレインコートやサングラスなどのプロデュースをさせて貰っています。

須藤 長谷部さんのお話も、以前からお伝えしていて。

 お話は伺っていました。でも、お会いしたらすごいカジュアルでびっくりしましたよ。ご挨拶しようと思ってスーツ姿の人を探したんですけど、この場にスーツの人が僕のマネージャーしかいなくて(笑)

長谷部 なんか申し訳ない。

 いえいえ、須藤さんも、長谷部さんも、いい意味でイメージを覆してくれる人たちなので、みんな共感しやすいと思いますよ。障害者やマイノリティの方に対する、よくわからないゆえのタブー感が払しょくされるというか。コミュニティチャームも、そうやって明るいイメージで広まったらいいなと思いますね。

――そうですね。「このチャームかわいい」がキッカケで、新しいコミュニケーションが広まるのもおもしろいですよね。みなさん、今日はどうもありがとうございました。



長谷部 健

1972年、東京都渋谷区神宮前生まれ。専修大学商学部卒業。
’02年(株)博報堂を退社。その後、ゴミ問題に関するNPO法人green birdを設立。原宿表参道を中心に、ゴミのポイ捨てに関するプロモーションを開始。現在、全国39カ所で活動中。’03年、’07年、’11年と渋谷区議会議員に当選。シブヤ大学、はるの小川プレーパークの設立、宮下公園の改装など、数々のプロジェクトを実施。

須藤 シンジ

1963年、東京都生まれ。
大学卒業後、(株)丸井に入社。次男が脳性麻痺で出生したことを機に、福祉の世界に疑問を感じ、ボランティアに参加しながら新しい切り口を模索。その後、’00年に独立し、マーケティングコンサルティング会社の(有)フジヤマストアを立ち上げ、’02年にはネクスタイド・エヴォリューションを開始。’12年、シブヤ大学と連携してNPO法人ピープルデザイン研究所を設立。近年、それらの活動が海外の教育関連機関からも注目を集めている。

要 潤

1981年生まれ、香川県出身。
2001年「仮面ライダーアギト」でデビュー。以降ドラマ、映画、バラエティなど多方面で活躍中。主な出演作品に、ドラマ「GOOD LUCK!!」「流星の絆」「うぬぼれ刑事」他、大河ドラマ「龍馬伝」、映画「CASSHERN」「神様のカルテ」他。また公開待機作に12月22日全国ロードショー「大奥~永遠~」、2013年には「謎解きはディナーのあとで」、「劇場版タイムスクープハンター」(主演)がある。現在は10月期フジテレビドラマ「TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~」に近藤幸宏役で出演中。

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