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BEAMS青野賢一さんと、SHIPS原裕章 クロストーク ~ファッションと音楽とSTYLISH STANDARD~

35thスペシャルインタビュー ―BEAMS 青野賢一さん × SHIPS 原裕章―
ファッションと音楽とSTYLISH STANDARD

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BEAMSの元名物プレスで、現在はビームス創造研究所に在籍している青野賢一さんと、SHIPS取締役執行役員・原裕章による驚きの同業他社対談! 仕事の接点よりも毎年恒例のクリスマスライブなど、音楽仲間としてつながっているふたりが、それぞれの歴史を振り返りながらセレクトショップの35年間を語りつくした。


――まずは、SHIPSの歴史を教えて頂けますか?

 もともとは上野に「三浦商店」というのがあって、本格的に輸入もの衣料を扱うようになったのが1970年ですね。それから1975年に「ミウラ&サンズ」を渋谷に出して、1977年に銀座で「SHIPS」を始めたんです。BEAMSさんは1976年スタートですよね?

青野 そうですね。ところで、三浦商店の頃はどんなものを売っていたのですか?

 1952年から始まって、最初はアメリカ軍の放出品とかです。社長の三浦は、三島由紀夫さんにPコートを売ったことがあると言っていましたよ。

青野 へぇ~、それはすごいな(笑)。

――どちらも同時代を生きてきたお店だと思うのですが、その歴史のなかでセレクトショップは社会にどんな影響を与えたと思いますか?

青野 でも、セレクトショップという名前で始めたわけではないですからね。

 そうですよね。セレクトショップと言われるようになったのはいつぐらいでしたかね?

青野 ‘90年代ですね。雑誌が使い始めたんですよ、最初は『Begin』だったと思いますけど。もともとは、インポートショップと言われていましたよね。

――お互いは意識する関係ですか?

青野 仲良くやっていますよ(笑)

 僕らからするとBEAMSさんって、すごくホットなイメージがあって。新しいものを常に出し続けていますよね。ある意味、羨ましいというか。SHIPSはトラディショナルなイメージで続けてきているので。

青野 確かに、SHIPSさんは昔からトラディショナルなイメージが強いですよね。でも、自分くらいの世代だと上野のお店も知っているので、アメリカのイメージもある。だからかもしれないですけど、トラディショナルなイメージって、メンズよりもレディスのほうに強く感じます。

 そうですか、その意見は初めて聞きました。

青野 レディスのほうがコンサバティブなものを揃えているイメージ。僕らの業態って、男性より女性のスタイルで差が生まれますよね。

 SHIPSはメンズから始まって、2年後の1979年にウィメンズが始まるんですよ。当時はウッディ・アレンの映画『アニーホール』が公開された頃で、あれはすべてラルフローレンですけど、女の人がメンズを着るというスタイルが生まれたんですよね。それを表現した感じですね。もともとは、スタッフが自分の奥さんや彼女に着せるものがないっていうところから始まって。

青野 だからこそ、トラディショナルなイメージが必然的にあるんでしょうね。


 ところで、青野さんはもともとどこのお店にいたんですか?

青野 大学1年生で「インターナショナルギャラリー ビームス」のバイトで入って。それでPRの部署に異動するのが1997年くらいかな。1999年に音楽レーベルを作りたいという話が生まれて<BEAMS RECORDS>をスタートし、どうせならお店も作ろうということになって2000年にショップを作りました。’00年代の中盤くらいからは、ウェブのスーパーバイザーも兼務していましたね。それで2010年から現在の創造研究所に異動したんですよ。

 僕からすると、「インターナショナルギャラリー ビームス」って一番BEAMSを象徴している感じがしますね。

青野 昔はいまの「ビームス 原宿」の2Fにあって、1Fがメンズカジュアル。らせん階段を上がっていくと、突然雰囲気が変わる感じでしたね。

――「インターナショナルギャラリー ビームス」は入るのが恐かったですよ!

青野 それを考えると、当時僕が入ったのは19歳ですから。その他のスタッフも24歳とか25歳。それでも、日本一入りにくい店って言われていました。

 昔は、洋服屋にある種独特の重さがあって、入るのに緊張したもんですよね。

青野 覚悟が必要でしたよね。

 スタッフもかっこつけた感じがあって。

青野 そうですよね。でも、インポートものを扱うお店は、’80年代のDCブランドとは売り方がまたちょっと違いましたよね。DCブランドの多くはファッションビルにあったから回遊もしやすいし、そんなに構えなくても入れたと思うんですよ。でも、インポートショップ(現在のセレクトショップ)は路面店が圧倒的に多かったので、ドアを開けるところから勇気がいった。

 いま、なかなかそういう洋服屋もなくなっていますよね。

青野 接客姿勢も、昔みたいにやっていたらクレームの嵐じゃないですかね。今はいろんな意味で民主化されたというか、平均化されましたよね。

 新入社員に将来の話を聞くと、昔はみんなバイヤーになりたいと言っていたんですよ。その次の世代はプレス(PR)が人気で、今はCSをやりたいって言う子が多いんですよね。

青野 へぇ~。何でですかね?

 モノより売る教育にたずさわりたいという人が増えていますね。ある意味、モノに対する興味が薄れているのかなという気もしますね。いま、プレスに行きたいっていう人はいないですよ。

青野 なんか、それは他でも聞いたことがありますね。プレスを募集しても人が集まらないらしい。

 花形職種じゃなくなったんでしょうね。

青野 現実は、3Kみたいなもんですから(笑)

 それが知れ渡ったということですかね?

青野 それよりも、あまり影響力がなくなったんだと思いますよ。もはや魅力的に見えないのかもしれない。

 インターネットの発達によって、かつては売り手側が情報を持っていたのが、お客さんのほうが詳しくなっていますからね。プレスも含めて、一部の情報を握っていることでイニシアチブを取れる時代じゃなくなっていますよね。

青野 そうですね。今の時代、ネット環境と時間のある人はいろいろ深いところまで調べられますからね。


 青野さんは今でも洋服をたくさん買いますか?

青野 僕は買っていますね。自分のところでも買いますし、友だちがデザイナーやっていたり、他のお店にも行きますよ。原さんは買っていますか?

 以前より買わなくなっていますね。欲しいものが減っているというか。

青野 裏を返すとどんなものが欲しいですか?

 僕は欲しいものが変わってないんですよ。家に行くとネイビーのジャケットがたくさんあって、奥さんなんかその違いがわからないと思う。毎日、同じもの着ていると思ってるんじゃないかな。

青野 裏地があるとかないとか、ボタンの数が違うとか。

 そうそうそう(笑)。だから、好きなものがほとんど変わってないです。あんまりいろいろ着るタイプでもないので。

青野 確かに、原さんはいい意味で安定感がありますよね。僕なんか会うたび違う格好をしているタイプなので。

 今日はおとなしい感じですね。

青野 最近は「この人と会うから、こういう格好をしよう」という思いが強くなっています。昔は「こういう場所に行くから、こういう格好をしていこう」のほうが大きかった。場所がフラット化して、どこも似たようなサービスを受けられるようになったことで、「その人に会う」ってことのプライオリティのほうが高くなっているんでしょうね。

 青野さんはDJもやられていていろんな場所に行かれるので、なおさらそう感じるんでしょうね。毎日お忙しそうですけど、音楽はいつ聴いているんですか?

青野 僕は移動中とかには全然聴かないんですね。昔から“ながら”聴きができなくて、どうしても真剣に聴いちゃうんですよ。

 ちょっと意外でした。僕は移動中に音楽を聴くタイプですね。

青野 これまでに、これを聴いて人生が変わったというような音楽はあります?

 僕が高校生の頃は『ポパイ』や『Made In U.S.A.カタログ』が創刊された頃で、アメリカ文化が日本にドーッと入ってきたんですよ。なので、音楽はもちろん映画や本も同じくらいハマって。音楽だと、当時はウエストコーストものが好きでした。でも、中学生くらいからクラプトンのライブを見に行ったりしていましたよ。

青野 中学からクラプトンは早熟ですね。ご兄弟いらっしゃいました?

 兄がいますね。

青野 やっぱり。僕は一人っ子で全然そういうのがないんですよ。思うに、ジャズと映画はアダルトカルチャーで、ロックはユースカルチャーなんです。ロックしか影響を受けてない人は、ずっとヤングなまま過ごしたいと思っていて。一方で、映画やジャズが基本にあって、ロックも好きだったという人は、そのバランスによってアダルト感が変わってくる。先日、菊池武夫さんの本でこれまでの氏のデザインを振り返ってみたんですけど、若いときから一貫して大人の服を作っているんです。どうしてかと思ったら、やっぱり影響されているものが映画、ジャズ。僕は小6でYMOなので、アダルトにもユースカルチャーにも分類できない宙ぶらりんな存在なんです。

 僕は小学生時代に、後追いだけどビートルズから入っているんですよね。ビートルズはコーラスグループからロックバンドまでいろいろな側面がありますが、根っこがはっきりしているじゃないですか。だから、着ている服もそういう根っこがわかるものが好きなんです。

青野 それはおもしろいですね。僕の場合、‘80年代の雑多な感じから影響を受けていますね。ニューアカと演劇とアイドルを同じ線上で語ることができた時代で、全部コミットしてあたり前みたいなところがあったのでスーパーフラットなんです。

 自分が影響を受けた年代がどこにあるかで違いますよね。’80年代はアメリカでロックが産業化して面白くなくなって、そこからワールドミュージックみたいのが入ってきて。それが全部同じ線上に並んでいるみたいなことですよね。

青野 はい。そういう体験があるからか、音楽をジャンルで聴くようなことはしてないですね。やっぱり音楽に限らず、時代性っていうのは振り返るといろんな影響を及ぼしていますよね。SHIPSさんが「STYLISH STANDARD」って言葉を使い始めたのは’90年代ですか?

 1990年くらいかな。創業時からマインドとしてぼんやりはあって、お店をやりながらようやく生まれた言葉ですね。


青野 ‘90年前半ってお店の数もどんどん増えて。BEAMSもSHIPSさんも、企業として何かを越えていかなくてはいけない時期だったと思うんですよね。バブルも終わって「次どうする?」というような。その一方で、これまで蓄積したものもたくさんあって。その時期にスローガンを掲げて、指針にしてきたのはすごいなと思いますね。

 BEAMSさんは、最初の頃「AMERICAN LIFE SHOP」でしたよね?

青野 そうですね。10周年(1986年)のときに「BASIC & EXCITING」っていう言葉と地球のマークができて、今は無きオレンジ色のビニールバッグを作ったんです。その時代が結構長く続いて、SHIPSさんが「STYLISH STANDARD」を掲げた頃は特に何もなかったですね。そのあたりでセレクトショップという呼び名が生まれて、各社とも「十把一絡げにしてくれるな」という思いがあった。そんな背景もあって、1998年にアートギャラリー(=B ギャラリー)を併設した「ビームス ジャパン」を作ったときに、「カルチャーショップ」という言葉を使いました。現在の「ハッピーライフ ソリューション カンパニー」というのは、30周年(2006年)のときに生まれたものですね。

 「ハッピーライフ ソリューション カンパニー」は、ブランドというより会社組織としてのスローガンですよね?

青野 もともと、「BEAMSに関わるすべての人が幸せであるように」というのが初代の社長から受け継がれているポリシーなので、ブレはないんです。でも、アウトプットとしてはカタチにしづらい言葉ではありますね。

 BEAMSさんもうちもそうだけど、デザイナーブランドではないので、服のカタチも変わるし時代によって変わっていく。そういうなかで、SHIPSはどういう服なのかを単純明快に答えられないんですよね。

青野 それがセレクトショップのおもしろさだと思いますけどね。

 昔はお互いに輸入ものだけでスタートして、そこからオリジナルを作るようになり、いまはどこもオリジナル中心になっている。もはやセレクトショップという言葉は合わないですよね。

青野 形骸化していますね。唯一、セレクトショップ的な匂いが残っているのは、僕は靴だと思うんです。オリジナルも作りますけど、それは「イギリスの○○で作りました」みたいなことで、服のオリジナルとは立ち位置が違う。例えばオールデンの別注ってあるじゃないですか、でも各社作るものが違いますよね。その違いの理由を考えたときに、何かしら各社のハウススタイルがいまも存在していて、そこに合わせるための靴。つまり「うちのスタイルにオールデンを合わせるならコレだよね」って生まれているんですよ。そう考えると、各社の個性は靴が表現している気がするんです。


――先ほどお話しにも出てきていましたが、かつてのセレクトショップはどこか入りづらい洋服屋だった。それがこれほどまで一般化したのはいつ頃だと思いますか?

 この業態自体はBEAMSさんやSHIPSから始まって、’90年代前半から同業他社が増えて拡大したんですよ。その後、2001年にSHIPSは大宮ルミネに出店するんですけど、やはり’00年代から駅ビル中心の営業に変わったことで、いっきに一般化したと思いますね。

青野 あと、’00年代に入ってからはアウトレットの存在が無視できなくなっていますよね。郊外のアウトレットモールに出店をすることは、当時はどこも二の足を踏んでいたところがある。でも、あそこに出店したことで、随分と接点が増えたと思うんです。そのきっかけは何かと言われれば、原さんが仰るとおり’90年代前半ですよね。東京に行かなければ買えないものが、全国的に買えるようなったのが’90年代前半ですから。

――これまで、BEAMSさんは生活雑貨など横の展開を広げて、SHIPSはファッション中心でここまできている。そこの差はどういうところから生まれていると思いますか?

青野 僕が思うのは、出発点が全然違うからだと思います。最初のBEAMSのコンセプトは先ほども出てきた「AMELICAN LIFE SHOP」で、服だけを売っていたわけではないんですね。どちらかというと、UCLAの学生の部屋みたいな店で、ジャンクなおもちゃがあったり、それこそ部屋っていうイメージから生活を紡ぎだす店だった。そういうDNAがもとからあるんですよ。最初に、三浦商店の時代に何を売っていたのかを聞いたのもそこなんです。SHIPSさんは、最初から衣料関係が多かったわけですよね。

 アメ横からスタートして、とにかく無いものを持ってくるというのがスタートなので、青野さんの仰るとおり違いがすでにあるのかもしれないですね。

青野 セレクトショップと呼ばれるようになってからの歴史を見るとなかなか理解できないと思いますが、本来のスタート地点が違うんですよね。

 生まれは隠せないものですね(笑)


――ファッションの世界で「STYLISH STANDARD」と聞いたとき、どんなスタイルを思い浮かべますか?

青野 メンズの話ですか? でも、その言葉はすごく男性っぽいですよね。やっぱり、ネイビーのジャケットに、グレーのスラックス、そこにオールデンじゃないですか。タイはタータンチェックや、ブラックウォッチとか。そのうえで、時代の空気感をディテールやシルエットの違いで魅せていく感じですかね。原さんの奥様がジャケットの違いに気づかないように、スタンダードっていうのはずっと続くものなので、積極的にコミットしないとその変化はわかりづらいんですよ。

 同じように見えて、同じモノではないんですよね。時代に応じて変化していく。

青野 お客さんに、「去年も同じようなのなかったっけ?」とよく言われるんです。でも、「とにかく着てみてくださいよ。肩とか違いますよね?」みたいなやり取りはよくあって(笑) そういうわずかな違いで、フレッシュに着られることが大事なんです。特にメンズクロージングの世界は。

 よく商品部のスタッフと話をするんですけど。例え話ですが、洋服が素材、色、スタイルの3つで構成されるものであるなら、SHIPSは1個だけを変える、2個変えちゃダメ、同じままでもダメ。つまり、色を新しくするなら素材とスタイルはキープする。そういう少しだけの変化、だけど同じものではないものを目指しているんです。BEAMSさんは常に先に先に行っているイメージがあるんですけど、SHIPSはそうではないんですよね。

――現在、セレクトショップと呼ばれているこの業態は、今後どのようになると思いますか?

青野 いろんな意味で過渡期だと思うんですよね。レーベル数もたくさんあるし、何でも揃う状況になっている。セレクトしていることで始めたセレクトショップが、何でもあるお店にこの10年で変化したんです。それがいいことだとされてきた時代。でも、「何でもありますよ」っていう価値にも限界がきていて、「たくさんあることが豊かなことではないのかもしれない」、そう思っている人が増えたと思うんです。お店の数を倍に増やせば、売り上げが倍になる時代でもないですし、もう一度足もとを見つめてやるべきことを考えていきたいですね。そのうえで、会社やお店という枠組みを越えて、外側に向かっていくアプローチをもっとやっていきたいと思います。

 いろんなものがあるけど欲しいものはない、そんな時代になりつつありますけど、SHIPSは原点に戻って考えていきたいですね。売り手がきちんと納得できて、お客さんに本気ですすめられるものを作っていきたい。改めて、「我々は洋服屋なんだ」ということを発信していこうと思います。

――今日はありがとうございました。


撮影協力:グランドファーザーズ


青野 賢一

1968年生まれ。明治学院大学在学中より「インターナショナルギャラリー ビームス」でアルバイトを開始。卒業後、社員となり、1997年よりプレス職に就く。2010年、社長直轄の部署として設置された「ビームス創造研究所」のスターティングメンバーとして抜擢。これまで培った経験や技術を活かし、執筆、選曲、大学や専門学校での講義、各種ディレクションなど、主にビームスの外のフィールドにて活動中。最近の仕事はPARCO「シブカル祭。」実行委員など。著書に『迷宮行き』(天然文庫/BCCKS)がある。
http://www.beams.co.jp/

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